理系の雑学・豆知識

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共有結合と分子

化学-化学基礎

1)分子からなる物質

 希ガス元素を除く、元素の原子は単独(1個)では不安定である。そのため、イオンのような安定な状態になる。イオンには陰イオン(非金属元素のイオン)と陽イオン(金属元素のイオン)があり、静電気力によりイオン結合をした。つまり、金属元素と非金属元素はイオン結合によって結合していた。

ここで、H2Oを考えてみよう。H2OはH原子2つとO原子1つが結合してできている。この2種類の元素はともに非金属元素である。つまり、H2OのHとOとの結合は、これまでのイオン結合ではないことになる。ここでは非金属元素どうしの結合を考える。この非金属元素の原子どうしが結合してできるものを分子という。また、H2Oのように分子を示す化学式を分子式という。

 

2)共有結合

 非金属元素どうしの結合。通常、非金属元素は陰イオンになるので、非金属元素どうしが結合する場合は静電気力による結合は起こらない。非金属元素どうしは互いに何個かの価電子(最外殻電子)を出し合ってそれを両者で共有することによって結合する。原子は最外殻が8の状態、または閉殻の状態が最も安定なので、互いの原子が価電子(最外殻電子)を共有することによって最外殻が8の状態になる。この結合を共有結合という。

 ここでは最外殻の電子だけを考える。そのため、電子式というもので考える。電子式とは次のように最外殻の電子だけを「・」で表したものである。

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 例1でNH3はNの価電子5個のうち3個は、Hの価電子と共有して対を作っており、これを共有電子対という。またNの残りの2個の価電子は対になっているが共有結合に使われていない。このような電子を非共有電子対という。NやHが共有結合する前の対になってない電子を不対電子といい、共有結合は互いの不対電子を共有することによって結合している。

価標と構造式

 共有結合で結合している原子どうしは、互いの不対電子を共有して結合しているが、これは互いに手をつなぎあっていると考えると分かりやすい。たとえば、Nは不対電子が3つなので手を3本、Hは不対電子が1つなので手を1本持っていると考え、N1つとH3で手をつないでいると考えると次のようになる。このいわゆる手を価標という。また価標を用いてあらわすと、その分子の構造がわかるので、価標を用いて示した式を構造式という。

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 ☆ 価標はいわばその元素の手である。非金属元素の価標の数を覚えておくと、色々な元素を共有結合させる(手をつながせる)ときに便利である。 

H1本, C4本, N3本, O2本,ハロゲン1本, 希ガス0本 

価電子のうちの不対電子がその元素の手の数になる → 同族では手の数も同じになる。

 

3)主な分子


結合の種類

 1本の価標で結ばれた結合を単結合、2本を二重結合、3本を三重結合という。分子の形も覚えておくこと!!特に水の「折れ線形」は注意!!


分子の種類
 H、O2、HClのように2個の原子からなる分子を二原子分子、H2O、CO2など3個以上の原子からなる分子を多原子分子という。また、18族の希ガス(He、Ne,Ar、Kr、Xe、Rn)は安定な電子配置をもつため、他の原子と結合することなく単独で存在できる。原子のままではあるが、非金属の元素なので、これも分子とみなし単原子分子という。

 

4)配位結合と錯イオン

配位結合

アンモニウムイオンNH4とオキソニウムイオンH3Oについて考える。

NH4 → アンモニアNH3分子に水素イオンHが結合した形。

H3O → 水H2O分子にHが結合した形。

これを電子式で考えると次のようになる。

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NHには非共有電子対がある。HはHが電子を放出して陽イオンになっているので、空の電子殻を持っている。共有結合は、2つの原子がそれぞれの不対電子を出し合って、それを互いに共有するが、この場合NHが持っている非共有電子対をHが共有させてもらう形で結合する。また、結合してしまえば、どのHも同じであるので、全体で+になる)。H3Oの場合も同様の原理でH2OにHが結合している。このように一方が持っている非共有電子対に、電子をもっていない他方が結合する共有結合を配位結合という。

  

錯イオン

金属の陽イオンが分子やイオンがもつ非共有電子対に配位結合したものを錯イオンという。        

配位子という。NH,HO,OH,CN,Clなどがある

 例)[Ag(NH)] 銀イオンAgがアンモニア分子2つに配位結合している。

 

錯イオンについての補足

①配位数

   金属イオンに配位する配位子の数を配位数といい、金属イオンの種類にのよりほぼ決まっている。

金属イオン

Ag

Zn2+

Cu2+

Fe2+

Fe3+

Co3+

配位数

 ②電荷数

錯イオンの電荷数は、金属イオンと配位子の電荷の和になる。

例:[Cu(NH)4]2+ → Cu2+=+2, NH=0 ・・・ +2+0×4=+2

 

③錯イオンの形・・・錯イオンの形は、その配位数によって次のような形をとる。

 

直線型(2配位),正方形(4配位),正四面体(4配位),正八面体(6配位)

 

④錯イオンの名称

   錯イオンの名称は、(配位数)・(配位子名)・(中心金属名)・(金属イオンの酸化数)の順で呼び、最後にイオン(陽イオンのとき)または酸イオン(陰イオンのとき)をつける。

配位数 → モノ(1),ジ(2),トリ(3),テトラ(4),ペンタ(5),ヘキサ(6)

配位子名→ NH(アンミン),CN(シアノ),Cl(クロロ),HO(アクア),OH(ヒドロキソ)

 

    例:[Ag(NH)]+  ジアンミン銀(Ⅰ)イオン   

[Cu(NH)4]2+  テトラアンミン銅(Ⅱ)イオン

       [Fe(CN)]4-  ヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸イオン  

[Fe(CN)]3-  ヘキサシアノ鉄(Ⅲ)酸イオン

 

5)分子の極性

電気陰性度

原子には電子を引きつける力がある。この強さを表す尺度を電気陰性度という。陰イオンになりやすい元素(素非金属元素:周期表では右寄り)の方が大きい。最外殻が原子核に近い元素(周期表では上)の方が大きい。

☆周期表上では希ガス(18族:最も右側)を除いて右上にある原子ほど大きくなる。希ガス元素は安定な元素で、他の原子と結合することはないので希ガスの電気陰性度は求められていない。

 

極性

異種原子間の共有結合では共有電子対は電気陰性度の大きい元素の原子の方に偏って存在する。結合で電子に偏りがあることを、結合に極性があるという。極性の大きさは、原子間の電気陰性度の差に比例する。よくでてくる元素の電気陰性度の大きさは、F > O > N = Cl > C > Hである。

 

極性分子

   分子全体で見たときに電子の偏りがあるものを極性分子という。

例 HCl 極性分子  CH4 無極性分子   

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☆ δ(デルタ)は電子の偏りを表し、δ-の方に電子が偏っている。 → は電子の偏りの向きを表す。分子全体でベクトルの和が0になる分子は無極性分子となる。

 

問題 次の分子は極性分子か無極性分子か。 ① Cl2 ② CO2 ③ NH3 ④ H2O

 各分子の形から、分子全体ベクトルを考えて判断する。

①同一の原子の結合だから、極性は生じない。無極性。  ②直線だから、ベクトルの和は0になるので無極性  

③三角錐で、ベクトルの和は0にならないので、極性  ④折れ線で、ベクトルの和は0にならないので、極性



6)分子結晶と分子間の相互作用

分子結晶

多数の分子が規則正しく配列してできた結晶を分子結晶という。

  

 ・分子間の引力(分子間力): 
           ファンデルワールス力・・・全ての分子間で生じる

             水素結合 ・・・ 全ての分子間で生じるわけではない。


 ・特徴:

   イオン結晶や共有結晶に比べ融点・沸点が低い,電気を導きにくい,柔らかい,昇華するものがある。これは、分

   子間力がイオン結合や共有結合に比べて、弱い結合であるためである。

結合の強さ ・・・ ファンデルワールス力,水素結合 << イオン結合,共有結合

 ・昇華性がある分子 

ドライアイスCO2,ヨウ素I2,ナフタレンC10H8,p-ジクロロベンゼンC6H4Cl2

分子間の相互作用

 ①ファンデルワールス力

分子間に働く引力で、イオン結合や供給結合よりも弱い結合である。分子量(分子の質量を示す数値で後で学習する)に比例するので、融点・沸点は分子量が大きいほど高くなる。

 

 ②水素結合

   下のグラフより、H2O,HF,NH3は分子量の割に沸点が著しく高い。

(理由)H2O,HF,NH3分子中のO-H,F-H,N-Hは特に極性が大きく、次のような分子間力より強い水素結合が生じるため、

 ③水の結晶

  一般的に、液体の体積は固体の体積よりも大きい。これは、液体の方が粒子が動ける分体積が大きくなる。しかし、

   水の場合は、固体の方が液体よりも体積が大きくなる。水の場合、水素結合によって分子が集まって固体になる。

  水素結合するには、一定の空気間が必要になる。そのため、固体の方が体積が大きくなる。

 

問題 次の①、②はそれぞれ沸点の低い順に物質を並べてものである。それぞれこのような順番になる理由を述べよ。

    また、分子量は次の通りである。 H2O=18、HCl=35.5、F2=38、Cl2=71、Br2=160

     ① F2<Cl2<Br2    ② F2<HCl<H2O


分子間の引力が強いほど、バラバラにするのにより熱を要するため、沸点が高くなる。① 3つとも無極性分子である。そのため、分子間にはたらく引力はファンデルワールス力のみで、これは分子量に比例するので分子量の低い順番に並ぶ。②F2は無極性分子なので、分子間にはたらく引力はファンデルワールス力のみ。HClは極性分子なので、分子にδ+、δ‐の偏りが生じるため、やや電気的な引力が生じる。H2Oは分子間で水素結合を生じる。このため、分子間の引力はH2O、HCl、F2となるため、沸点はF2<HCl<H2Oになる。