生命の化学

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1)生命を構成する物質

生命体を構成する主要元素

表.人体を構成する元素

元素

質量%

構成する主な物質等

O

62.8

水,タンパク質,糖,脂質,核酸,その他多くの物質

C

19.4

タンパク質,糖,脂質,核酸,その他多くの物質

H

9.3

水,タンパク質,糖,脂質,核酸,その他多くの物質

N

5.1

タンパク質,核酸など

Ca

1.4

リン酸カルシウムなど

S

0.64

タンパク質など

P

0.63

タンパク質,脂質,核酸,ATPなど

Na

0.26

ナトリウムイオン

K

0.22

カリウムイオン

その他

0.25

Cl,Mg(クロロフィル),Fe(ヘモグロビン),I,F,Mn,Cu,

油脂

 油脂は高級脂肪酸のグリセリンエステルである。常温で固体のものを脂肪、液体のものを脂肪油といい、あわせて油脂という。体に蓄えられた油脂はエネルギー源になるほか、体の衝撃防止や保温の役を担っている。

 油脂のように、高級脂肪酸とのエステルよりなる生体成分を総称して脂質という。細胞膜の成分であるリン脂質は分子内にリン酸基をもつ脂質である。卵黄に多く含まれるレシチンはリン脂質の例である。

2)生命を維持する物質              

酵素

 

 

ビタミンとホルモン

 ・ビタミン

生体内の代謝や生理現象を行う際に、補足的に働く物質の総称。補酵素やそれ自身生理作用を持つものもある。多くは人間の体内で合成できないものである。

          表.ビタミンの化学名

ビタミン名

化学名

ビタミンA

レチノール

ビタミンB

チアミン

ビタミンB

リボフラビン

ビタミンC

アスコルビン酸

ビタミンD

カルシフェロール

ビタミンE

トコフェロール

 

・ホルモン

  生体内で合成される物質で、細胞に働きかけてさまざまな生理作用を示す。血糖値を下げる作用があるインスリンなど、タンパク質でできているものや、男性ホルモン,女性ホルモンなど、タンパク質以外の物質からなるものもある。

代謝

生体内で行われる酵素を触媒とした物質の化学変化を代謝という。生物は代謝により生命活動に必要なエネルギーを得る。化学物質がもつ化学エネルギーは、その物質の化学構造を維持するためのエネルギーである。複雑な化学構造をもった物質ほど、高い化学エネルギーをもっている。生体内での化学変化(代謝)には化学エネルギーの出入りが起こり、このエネルギーの出入りをエネルギー代謝という。

 

簡単な物質 + エネルギー → 複雑な物質

簡単な物質(低エネルギー)が複雑な物質(高エネルギー)に変化するには足りない分のエネルギーが吸収される。

 

⇒ 細胞は簡単な物質(低エネルギー)を取り入れ、複雑な物質(高エネルギー)に変えて細胞内に貯えている。

 

 複雑な物質 → 簡単な物質 + エネルギー

複雑な物質(高エネルギー)が簡単な物質(低エネルギー)に変化すると、余ったエネルギーが放出される。

 

⇒ 細胞は貯えておいた複雑な物質(高エネルギー)を必要に応じ簡単な物質(低エネルギー)に変化させ、放出したエネルギーを利用して活動している。 

同化と異化

外界から取り入れた簡単な物質を、その生物に必要な複雑な物質に変える働きを同化という。これに対して体内の有機物(複雑な物質)を分解して簡単な物質に変えることを異化という。

ATP(アデノシン三リン酸)

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生物は代謝によって出入りする化学エネルギーを直接利用することはできない。生じた化学エネルギーはATPという物質によって利用できるようになる。ATPはアデノシン三リン酸の略号で、アデノシンという物質にリン酸が3つ結合した化合物である。

このATPは分解するとADP(アデノシンニリン酸)とリン酸になる。このときエネルギー(約30kJ)が放出され、生物はこのとき放出されるエネルギーを利用している。リン酸が外れるとエネルギーが放出されるので、リン酸とリン酸の結合を高エネルギーリン酸結合という。逆に、ADPは種々のエネルギーを吸収してリン酸と結合し、ATPに戻る。

 

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同化の例(植物の光合成)

 植物の光合成は、植物細胞の葉緑体で行われ、複数の反応課程が組み合わさっている。光エネルギーを吸収すると、二酸化炭素と水(簡単な物質)がから、最終的にグルコース,デンプン(複雑な物質)を合成し、体内に蓄える。

反応式:6CO2  +  12H2O  +  光エネルギー  →  C6H12O6  +  6O2  +  6H2O

 

異化の例(好気呼吸)

細胞内に貯えてあるグルコース(複雑な物質)を分解し、エネルギーを得る反応。このとき、酸素O2を使って、二酸化炭素CO2ができるので、好気呼吸という。

反応式: C6H12O6  +  6O2  +  6H2O  →  6CO2  +  12H2O  +  38ATP

 

好気呼吸は解糖系,クエン酸回路,電子伝達系という3つの過程に分かれている。

 

嫌気呼吸

 酸素を用いないで物質を分解し、エネルギーを得る反応で、主に微生物が行い、発酵や腐敗がある。グルコースが利用される発酵には、乳酸菌が行う乳酸発酵と酵母が行うアルコール発酵があり、それぞれ、乳酸とエタノールを生成する。腐敗は、発酵と同じ現象である。人間にとって有用な場合が発酵、有害な場合が腐敗である。