理系の雑学・豆知識

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材料の化学

化学-補足

金属の性質

金属元素は電子を放出して陽イオンになりやすい。陽イオンどうしは電気的に反発しあうが、放出した電子(負の電荷を帯びた粒子)が間に入り、陽イオンどうしを集合させている。この電子を自由電子といい、金属特有の性質は自由電子によるものが多い。

・展性がある:薄く平らに広げられる性質

   ・延性がある:細く伸ばすことができる性質

   ・伝導性が大きい:電気や熱をよく導く。最も伝導性が大きいのは銀、次に銅。

   ・金属光沢がある:金属には特有の光沢がある。



超伝導

 金属の中には、ある温度以下では電気抵抗がゼロになるものがあり、この現象を超伝導という。その物質が環状であれば、電場を切っても永遠に電気が流れる。この性質は超電磁石として医療機器やリニアモーターカーに利用されている。



半導体

 単体のケイ素やゲルマニウムは金属と絶縁体の中間の電気伝導性を示し、半導体と呼ばれる。半導体はトランジスターなどに利用されている。



金属の製錬・精錬

 金属は天然では、金・白金は単体で存在するが、そのほかの金属は鉱物中に酸化物や硫化物の化合物の形で存在している。鉱物などから金属の単体を取り出すことを製錬という。また不純物を含んだ金属の純度を上げ精製する課程を精錬という。



鉄の製錬

鉄の単体は赤鉄鉱(主成分Fe2O3)や磁鉄鉱(主成分Fe3O4)とコークス(C),石灰石CaCO3を溶鉱炉に入れ、熱風を送ると、コークスが一酸化炭素COになり、Fe2O3やFe3O4を還元することで得られる。ここで得られた鉄を銑鉄といい炭素が3~5%含まれている。これを、転炉に移して酸素を吹き込むと、炭素分がCO2となって抜け、0.04~0.25%の鉄になる。これを鋼という。

Fe2O3 + 3CO → 2Fe + 3CO2↑ , Fe3O4 + 4CO → 3Fe + 4CO2

 

銅の電解精錬

純度が99%程度の粗銅の板を陽極に、純銅の板を陰極に用いて電解すると、粗銅板はCu2+になって溶け、陰極に純度99.99%以上の銅が陰極に析出する。これを銅の電解精錬という。電解液には硫酸銅(Ⅱ)の硫酸酸性溶液を用い、50~60℃,0.2~0.5Vで電解する。このとき、イオン化傾向が銅より大きいニッケルなどの不純物は、陽イオンとなって溶ける。またイオン化傾向が銅より小さい銀や金は陽極の下に落ちてかたまり陽極泥となる。

 

(陽極) Cu(粗銅) → Cu2+ + 2e- (陰極) Cu2+ + 2e- → Cu(純銅)

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ナトリウムの製錬

塩化ナトリウムNaCl(融点801℃)に、凝固点降下剤として塩化カルシウムCaClを加えると、約600℃で溶解する。この溶解液を電解液として陰極に鉄、陽極に炭素を用いて電気分解すると、次のような反応によって陰極に金属ナトリウムが得られる。このとき、CaはNaよりもイオン化傾向が少し大きいので、酸化されない。

 

陰極( Na++ 2e- → Na ),陽極( 2Cl- → Cl2↑+ 2e- )

 

アルミニウムの製錬

アルミニウム鉱石のボーキサイトから不純物を除いて得られたアルミナ(Al,融点2015℃)に氷晶石(NaAlF)を加えて加熱すると970℃で融解する。この融解液を、両極に炭素を用いて電気分解すると、陰極に融解したアルミニウムが得られる。

 

陰極( Al3++ 3e- → Al ),陽極( C + O2- → CO +2e- )

 

合金

 2種類以上の金属を溶かし合わせるか、金属に非金属を溶かし込んだものを合金という。合金にすることにより、もとの金属にない優れた性質を持つようになり、単体で用いるよりも、色々なところで利用されている。

  表.主な合金

合金名

特徴

用途

組成(%)

黄銅

(しんちゅう)

丈夫・加工性大・美しい

装飾品・加工材

Cu(60~90),

Zn(10~40)

ジュラルミン

軽い・丈夫・加工性大

航空機の機体

Al(94),Cu(5),

残りMg,Mn

ステンレス鋼

さびない・耐薬品性大

建造物・器具

Fe(70),Cr(20),Ni(10)

ニクロム

電気抵抗大、耐酸化性大

電熱線

Ni(57~79),

Cr(15~20),その他

白銅

加工性大

貨幣

Cu(80),Ni(20)

青銅

硬い・美しい

銅像・機械

Sn(2~35),残りCu

はんだ

低融点・金属になじむ

金属の溶接

Sn(25~90),残りPb

 

ステンレス鋼

  鉄にクロムを溶かした合金で、クロムの酸化物の被膜ができ表面を保護するので、さびにくく光沢が持続する。

チタン合金

  チタンは比較的軽く酸化被膜により耐食性に優れている。チタンにアルミニウム,鉄,クロムなどを添加し合金としたものをチタン合金といい、色々なチタン合金が実用化されている。形状記憶合金(Ti-Ni 1:1)などがある。

めっき

 金属の表面を、腐食しにくい金属で覆う方法をめっきという。例えば、金属の陽イオンを含む水溶液に金属鉄を入れ、電気分解などを行うと、金属の表面で、陽イオンが還元され単体が析出し、鉄の表面を覆い、めっきできる。

 

 表.鉄にめっきをしたものの例

めっきの種類

金めっき

クロムめっき

亜鉛めっき

スズめっき

用途

食器・装飾品

水道栓

トタン

ブリキ



3)セラミックス

 本来、セラミックスとは土器・陶器・磁器といった「やきもの」を意味した。今日では、非金属元素の無機質固体材料を意味する。陶磁・セメント・ガラスが例である。

 

陶磁

 粘土を水でこね、ろくろなどで成形する。十分乾燥すると水分が90%除かれる。その後、約700℃で焼く(素焼きという)と、水分がほとんど除かれる。さらに、釉薬(うわぐすりともいい、色々な金属の化合物からなる顔料)を塗り約1300℃で焼き(本焼きという)、ゆっくり冷やす。この課程を経て磁器ができあがる。磁器は硬く、水にとけない。これは、焼くことにより粘土の成分が部分的に融け、粘土粒子が接着して固まること(焼結という)による。

   表.陶磁の種類

種類

土器

陶器

磁器

原料

粘土

粘土+石英

粘土+石英+長石

焼成温度(℃)

700~900

1100~1300

1200~1500

機械的強度

やや劣る

中間

優れている

焼き締まり

多孔質

多孔質

ガラス質

打音

濁音

濁音

金属音

吸水性

なし

釉薬

なし

塗布してある

塗布してある

用途

れんが,瓦,植木鉢など

食器,タイル,茶器,衛生用品,つぼ など

高級食器,高級タイル,装飾品など

セメント

 2つの物体を貼り合わせるものをセメントという。一般に建築材料として使われるセメントは、ポルトランドセメントである。これは、石灰岩(CaCO3),珪酸質粘土(SiO2,Al2O3,H2Oなど),酸化鉄(Fe2O3)を粉砕し混ぜ合わせ、回転釜で約1500℃に加熱・焼結させた焼結体(ケイ酸カルシウムとアルミン酸カルシウム)に少量のセッコウCaSO4・H2Oを加えて微粉砕した混合物である。

 セメントに水を加えると、セメント粒子の水和が起こり硬化する。セッコウは硬化のプロセスをおそくするためにくわえられる。

 セメントに砂利と砂混ぜたものをコンクリート、セメントに砂を混ぜたものをモルタルという。コンクリート圧縮には強いが、引っぱりには弱い。そこで、その逆の性質を持つ鋼と組み合わせ、互いの弱点を補った建築材料が鉄筋コンクリートである。



ガラス

 ガラスの主成分は二酸化ケイ素SiO2である。SiO2は天然では石英や水晶として産出し、砂状のものはケイ砂とよばれる。これらは、SiO2の正四面体構造が三次元的にいくつも結合した結晶である。例えば石英ガラスは、石英を約2000℃に加熱・融解し、成形し、凝結させたものである。この固体では、SiO2の配列が結晶でみられる規則性がない。このような粒子の配列に規則性のない固体を非晶質(アモルファス)という。ガラスは非晶質で、決まった融点がなく、ある温度幅で軟化する。この温度を軟化点という。

 表.ガラスの種類

名称

ソーダ石灰ガラス

鉛ガラス

(クリスタルガラス)

ホウケイ酸ガラス

石英ガラス

主成分%

SiO2

69~73

35~36

65~80

100

B2O3

 

 

13~28

 

Na2O

14~17

5~8

4~5

 

PbO

 

20~60

0.2~6

 

軟化点

650~730

580~630

830

1670

用途

板ガラス,容器,レンズ,プリズム,耐熱食器,理化学器具,光学器具,半導体製造器具,医療器具,装飾品など

 

4)機能性材料

 プラスチック,金属,セラミックスなどの材料を組み合わせてたりして、新しい機能を持たせた素材。

 

ファインセラミックス

 従来のセラミックスは、さびない・硬い・熱に強いという長所があるが、もろい・温度変化に弱い・加工しにくいという欠点がある。そこでこの欠点を除くため、精製した原料や人工的に合成した原料(炭化ケイ素SiC,窒化ケイ素Si3N4)を用いた製品をファインセラミックスといい、IC(集積回路)の基板,ガスタービンやエンジン,人工骨や人工関節,など、幅広く利用されている。

 

光ファイバー

 通信や胃カメラに使われる光ファイバーは、高純度の石英ガラスを主体としている。中心部の屈折率を周囲部より大きくし、端から入った光が壁から逃げないように工夫されている。光を内部に閉じこめて伝送できるようにした繊維である。

 

複合材料

・繊維補強プラスチック(FRP,強化プラスチック)

 ガラス繊維、炭素繊維などで織った布をプラスチックに塗り固めた素材。スキー板,テニスラケットなどに用いられる。  

 

・繊維強化金属(FRM)

セラミック繊維,金属繊維にアルミニウム,マグネシウム,チタンなどの金属を組み合わせた素材。航空機部品などに用いられる。