理系の雑学・豆知識

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イオン結合とイオン結晶

化学-化学基礎

 1)イオンの電子配置(イオンの生成)

原子は最外殻電子が8個(K殻しかないものは2個)の状態が最も安定であった。ということは、最外殻電子が8個(K殻しかないものは2個)でないものは安定な状態になろうとする。そこで原子は自身が持っている電子を放出(捨てる)したり、逆に足りない分を受け取ったりして、最外殻電子が8個の状態になる。この状態をイオンという。電子はマイナスの粒子なので、電子を受け取った場合は、陰イオン(マイナスイオン)、放出した場合は、陽イオン(プラスイオン)になる。



  最外殻電子1~3の原子 → 最外殻電子を放出し、一つ内側の電子殻で8になり、安定化。・・・陽イオンの生成

  最外殻電子6~7の原子 → 足りない電子を受け取って、その電子殻で8になり、安定化。・・・陰イオンの生成

  最外殻電子4~5の原子 → イオンにならない。別の方法で安定化する。

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 イオンの化学式をイオン式という。+,-は元素記号の右上に付ける。電子を1個放出した場合+,2個では2+,3個では3+と表記する。電子を1個受け取った場合は-,2個では2-と表記する。+,2+,3+をそれぞれ1価,2価,3価の陽イオンといい、-,2-,3-をそれぞれ1価,2価,3価の陰イオンという。

 

イオンの電子配置は必ず希ガス元素の電子配置と同じになる。また、F,Mg2+のように原子1つからできているイオンを単原子イオンという。

 

陽イオンになるのは金属元素、陰イオンになるのは非金属元素である。  注意:水素Hは特別。 非金属だがH+となる(H-にもなる)。

 

問題 次のイオンの電子配置をかき,また同じ電子配置をもつ希ガスの原子の名前をいえ。 

(ア)Li (イ)Cl (ウ)S2 (エ)Ca2+



まず、イオンになる前の原子の状態の電子配置を考えて、そこから、イオンの電子配置にする。

(ア)LiはLiなので、電子配置は K2,L1 である。Li+は最外殻の電子を1つ放出したイオンなので、 K2,L1 つまり、K2

(イ)Clは17Clなので、電子配置は K2,L8,M7 である。Cl-は最外殻に電子を1つ受け取ったイオンなので、K2,L8,M7+1 つまり、K2,L8,M8

以降同様に考えると、 (ウ)K2,L8,M6+2 より、K2,L8,M8  (エ)K2,L8,M8,N2 より、K2,L8,M8 

また、同じ電子配置をもつ希ガスは、それぞれのイオンの電子数と同じ電子数の希ガスを答えればよい。

(ア)ヘリウム (イ)アルゴン (ウ)アルゴン (エ)アルゴン

問題

 3Li,9F,11Na,12Mg,17Clが安定なイオンになったき、これらのイオンをイオン半径の大きい順に並べよ。 

電子配置はそれぞれ次のようになる。

3Li K2L   F K2L7  11Na K2L8M1  12Mg K2L8M2  17Cl K2L8M7

これらの原子が安定なイオンになったときの電子配置は、それぞれ次のようになる。

3Li K2   F- K2L8  11Na K2L8  12Mg2+ K2L8  17Cl- K2L8M8

イオン半径はそのイオンの中心から最外殻までの長さなので、これらのイオンの最外殻を見ると、3Li+はK殻、17Cl-はM殻なのでそれぞれ、最小、最大となる。

F-11Na12Mg2+は最外殻は同じL殻で、電子(-の粒子)の数も全て10個ある。この3つには陽子(+の粒子)の数に違いあり、それぞれ9、11、12個である。これらのイオンは10個の電子(-10)をそれぞれ、+9、+11、+12で引きつけいている。この場合、より大きな+の方が引きつける力が大きいので、イオン半径はより小さくなる。

つまり、17Cl-9F-11Na+12Mg2+>3Li+

2)イオン化エネルギーと電子親和力

イオン化エネルギー


イオン化エネルギー 原子中の電子は原子核と電気的な力によって引き付けあっているので、原子から電子を無理やり取り去るにはエネルギーを加えなければならない。

原子から電子を取り去り、陽イオンにするのに必要なエネルギーをイオン化エネルギーといい、特に電子を1個とるのに必要なエネルギーを第一イオン化エネルギーという。

☆陰イオンになりやすい元素(非金属元素)・・・イオン化エネルギーが大きい 

電子を受け取って陰イオンになる。→ 自ら電子を放出す(捨て)ることはない。 

→ 電子を無理やり取り去るには大きなエネルギーが必要。

→ 陰イオンになりやすい非金属元素はイオン化エネルギーが大きい。

 

☆陽イオンになりやすい元素(金属元素)・・・イオン化エネルギーが小さい

 電子を放出して陽イオンになる。→ 自ら電子を放出し(捨て)ようとする。 

→ 電子を無理やり取り去るには小さなエネルギーでよい。

→ 陽イオンになりやすい金属元素はイオン化エネルギーが小さい

 

周期表上では、金属元素は左寄り、非金属元素は右寄りに分布しているので、同一の周期(横の並び)では右に行く(原子番号が大きくなる)ほどイオン化エネルギーは大きくなる。

同一の族(縦の並び)では、下に行く(原子番号が大きくなる)ほど最外殻はK,L,M・・・と外側に行く(原子核から離れていく)ので、原子核と電子の引き合う力は小さくなるので、電子を取り去るエネルギー(イオン化エネルギー)は小さくてすむ。つまり上に行くほどイオン化エネルギーは大きくなる。

⇒ イオン化エネルギーは周期表で右上にある元素ほど大きい ・・・ Heが最大

電子親和力

原子が電子を1つ受け取って1価の陰イオンになるときに放出されるエネルギーを電子親和力という。エネルギーが放出されるということは、原子が高いエネルギー状態から低いエネルギー状態になり、余ったエネルギーが放出されている。最外殻電子6~7の原子は電子を受け取って、その電子殻で8になり、安定化(低エネルギーの状態に変化)するので、他の原子に比べて電子親和力がおおきい。




3)多原子イオン

  2つ以上の原子でできているイオンを多原子イオンという。

例1 水酸化物イオン OH- → O原子1個とH原子1個が結合し、さらに電子1つを受け取った形。全体で-1

            電子の数は O原子の電子数8 + H原子の電子数1 + 受け取った電子数1 = 10個



 例2 アンモニウムイオン NH4+ → N原子1個とH原子4個が結合し、さらに電子1つを放出した形。全体で+1

            電子の数は N原子の電子数7 + H原子の電子数1×4 - 放出した電子数1 = 10個





4)イオンの名称とイオン式

  オン式を書くときはその元素が電子を何個もっていて、それがK殻に何個,L殻に何個・・・と考えていけば書けるが、代表的なものは覚えてしまうとよい。

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鉄Feや銅Cuなどは複数のイオンになることがあるので、(Ⅱ)や(Ⅲ)をつけてくべつする。

 

周期表では同族(縦の並び)の元素は同じ価数になる。

 

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問題 次のイオン1個に含まれている電子の数は,それぞれ何個か。

   (ア) K+   (イ) NH4+   (ウ)Cl   (エ)NO3   (オ) SO42




各原子の電子数の総和を求めて、イオンになったときの+,-を引いたり、足したりする。

(ア)Kは19Kだから、電子を19個もっている。Kなので、1個引いて、18個。

(イ)7N + 1H×4だから、NH4で11個。NH4+だから、1個引いて、10個。

(ウ)17Clだから、Clで17個。Cl-なので、1個足して、18個。

(エ)7N + 8O× 3 だから、NO3で、31個。NO3-だから、1個足して、32個。

(オ)16S + 8O × 4 だから、SO4で、48個。SO42-だから、2個足して、50個。



5)イオンからなる物質

 金属元素と非金属元素が結合する場合、それぞれの元素は陽イオン(+イオン),陰イオン(-イオン)になる。電気的に+と-は互いに引き合い、このときの引き合う力を静電気力(またはクーロン力)という。陰イオンと陽イオンは静電気力により互いに引き合い結合する。これをイオン結合といい、イオン結合でできている結晶をイオン結晶という。イオンからなる物質を表すには、成分元素の原子数を最も簡単な整数比で表した組成式で表す。

 

 組成式の作り方 

+,-の数を合わせて組み合わせる。+イオンの原子,-イオンの原子の順で書く。名前は-イオンの名前,+イオンの名前の順に呼ぶ。(酢酸イオンが含まれるときだけは逆にする。)




 Na+(ナトリウムイオン)とCl(塩化物イオン) → NaCl(塩化ナトリウム)

+と-だから、Na+とCl1つずつで結合させる。




Ca2+(カルシウムイオン)とCl(塩化物イオン) → CaCl(塩化カルシウム)

         2+と-だから、Ca2+1つにCl2つで結合させる。




Mg2+(マグネシウムイオン)とOH-(水酸化物イオン) → Mg(OH)(水酸化マグネシウム)

2+と-だから、Mg2+1つにOH2つで結合させる。多原子イオンが複数必要なときは「(  )」でくくる



問題 次の物質を化学式(組成式)で書け。



1)塩化マグネシウム  2)水酸化カリウム  3)炭酸カリウム  4)硝酸カルシウム  5)酸化バリウム  

6)硫化鉄(Ⅱ)  7)硫酸亜鉛  8)塩化アルミニウム  9)酸化鉄(Ⅲ)  10)炭酸アルミニウム  

11)硝酸アンモニウム  12)硫酸銅(Ⅱ)  13)酢酸ナトリウム  14)塩化銀  15)リン酸カリウム  

16)炭酸水素ナトリウム




1) MgCl2   2) KOH   3) K2CO3   4) Ca(NO3)2   5) BaO

6) FeS   7) ZnSO4   8) AlCl3   9 ) Fe2O3   10) Al2(CO3)3

11) NH4NO3   12) CuSO4   13) CH3COONa   14) AgCl   15) K3PO4

16) NaHCO3

イオン結晶の性質

融点が高い。

 電気的な引力は比較的強いので、陽イオンと陰イオンは強く結合しているので、ばらばらになりにくい。そのため、固体を液体にためには、高い熱が必要になり、融点が高くなる。

 

問題 NaFとNaClで融点の高いのはどちらか。

結合力の強いほうが融点は高い。電気的な引力は+、-の価数が大きく、イオン間の距離が短いものがより強い結合となる。この場合、Na+とF-、Na+とCl-で、ともに+1、-1の結合である。また、Na+は共通しているので、F-とCl-を比較すると、F-の方がイオン半径が小さいのでイオン間の距離はNaFの方が小さくなり、結合力も強くなる。

 

水溶性と電気伝導性。

 結晶の状態では電気伝導性はないが、水に溶かした水溶液では、電気電動性が見られる。イオンからなる物質は水溶液中ではイオンに分かれて存在している。これを電離という。そのため、水溶液中では+と‐が存在するので電気が流れるようになる。

 イオン結晶は水に溶けやすいものが多く、水に溶けて電離する。イオン結晶のように水に溶けて電離するものを電解質という。また、砂糖のように水に溶けても電離しないものを非電解質という。イオン結晶の中には水に溶けにくいものもあり、塩化銀AgClや炭酸カルシウムCaCO3などが例である。

硬いがもろい。

 イオン結晶は陰イオンと陽イオンの結合力が強いため、硬い結晶になる。力を加えると割れやすい性質を持っている。