1)原子量・分子量・式量
原子の相対質量
原子1個の質量は下表のように10-23g程度で非常に小さく扱いにくい。そこで、ある特定の原子の質量を基準とし、他の原子の質量がその原子の質量の何倍にあたるかという比を使って求めたで表すと便利である。現在では質量数12の炭素12Cの質量を12と決め、これを基準として各原子の相対質量を求めている。
☆指数の意味
原子量
原子の相対質量を原子量という。しかし、元素には質量数の異なる同位体が存在するものが多い。各元素の同位体の存在する割合は決まっているので、原子量は同位体の存在比を考慮して、平均値として計算される。
例 塩素Clの原子量
35Clの相対質量×存在比 + 37Clの相対質量×存在比
= 34.969×0.7577 + 36.966×0.2423 = 35.45
☆ 有効数字
<桁数の数え方>
数の桁数をいうとき、最も高い位が0以外のときは、そこから数えて、何桁数と言う。
例: 1.0032・・・有効数字5桁という
最も高い位が、0のときは0以外の数字が出てきたところから数えて何桁という。
例: 0.001360・・・有効数字4桁という。
<数を指定された桁数で表す>
例 0.015623を有効数字3桁で表せ・・・この場合は有効数字4桁目を四捨五入する。 0.0156
1.3を有効数字3桁で表せ・・・この場合は2桁の数なので0を用いて3桁にする。 1.30
<なぜ有効数字か>
理科で扱う数は測定値なので、例えば2.3と2.30では意味が違ってくる。2.3は小数第一位(10分の1)までを測定したという意味で、2.30は少数第3位(100分の1)までを測定したという意味になる。すなわち、2.3の場合は100分の1の値が1なのか2なのか・・・どの値になるか分からないわけである。
例えば4.64+2.3=6.94で、6.94の各数字には次のような意味が出てくる。
4.64 1/100まで測定
+)2.3 1/100までは測定していない
6.94 6.94の4はもっとも不正確
つまり、計算をする場合は次のように桁数を合わせる。
足し算・引き算 → 小数点以下の位を最も小さいものあわせる。
例 1.33 + 10.5 + 8.3 = 20.13 ≒ 20.1 (この場合、少数第一位に合わせる)
掛け算・割り算 → 有効数字で最も小さい桁数にあわせる。
例 0.102 × 0.11 = 0.01122 ≒ 0.011(この場合有効数字2桁)
計算の中で測定値ではない数に有効数字をあわせてはいけない。計算の中で出てきた数の意味を考えて有効数字の計算をすること。
問題 天然のケイ素には,28Si(相対質量27.977,存在比92.23%),29Si(相対質量28.976 存在比4.67%),30Si(相対質量29.974,存在比3.10%)の3種類の同位体がある。ケイ素の原子量を求めよ。
分子量・式量
NH3のような分子からなる物質の相対質量を分子量といい、その分子を構成する原子の原子量の総和である。また、NaClのようなイオンからなる物質の組成式やHO-のようなイオン式中に含まれる原子の原子量の総和を式量という。
原子量は周期表に記されている。問題を解く上で必要なときはその都度与えられるので、それを用いればよい。
H=1.0, C=12, N=14, O=16, Na=23, S=32, Cl=35.5, K=39, Ca=40, Cu=64など
☆ 分子量も式量もその物質を構成する原子の原子量の総和である。
例 NH3の分子量 = 14 + 1.0×3 = 17
NaClの式量 = 23 + 35.5 = 58.5
Ca(OH)2の式量 = 40 + ( 16 + 1.0 ) × 2 = 74
SO42-の式量 = 32 + 16×4 = 96 (イオンの+,-は気にしなくてよい)
空気の分子量 ・・・ 基本的に混合物の分子量は求めないが、空気のようにその成分(窒素N280%,酸素O220%)の混合比が分かっていれば、求めることができる。
14×2×0.80 + 16×2×0.20 = 28.8
CuSO4・5H2O ・・・ 硫酸銅(Ⅱ)五水和物 注意 CuSO4 × 5H2Oという意味ではない。
64+32+16×4 + ( 1.0×2+16)×5 = 250 (CuSO4にH2Oが5つという意味)
2)物質量(モル数)
物質量(モル数)
原子や分子の重さは非常に小さな値で、われわれが日常的に使う1g~1kgといった重さの中に含まれる原子や分子の数は1022~1025個と莫大な数になる。これは非常に扱いにくいので、原子や分子の一定数個を1つの集団として数えていくのが便利である。これは12個をひとまとめにして1ダースとし、このダースを単位として鉛筆やビールなどの本数を数えるのと同じである。
そこで、原子,分子,イオンなどの粒子を6.0×1023個をひとまとめにして 1mol(モル)とよぶ。この6.0×1023をアボガドロ数といい、単位を付けた6.0×1023/mol
をアボガドロ定数という。
例題 1、塩化ナトリウム 3.5molは何個か。
1mol = 6.0×1023個 だから、3.5molでは、
6.0×1023×3.5 = 21×1023[個]
2、アンモニア 3.0×1022個の物質量を求めよ。
6.0×1023個 = 1molだから、3.0×1022個では、
=5.0×10-2 [mol]
3、水0.50 mol中に水素原子と酸素原子はそれぞれ何個ずつあるか。
1mol = 6.0×1023個 だから、0.50molでは、
6.0×1023×0.50=3.0×1023[個]
ここで、水H2O1個は水素原子H2個と酸素原子O1個からなる。水3.0×1023個では、
水素原子 3.0×1023×2=6.0×1023[個], 酸素原子 3.0×1023×1=3.0×1023[個]
モル質量(1molの重さ)
同じ1ダースでも、鉛筆1ダースと消しゴム1ダースでは重さがちがう。これは、鉛筆1本と消しゴム1個の重さがちがうからである。同様に、H21molの重さと、O21molの重さもちがってくる。そこで、1molの重さを考えてみる。まず、1mol=6.0×1023個であるが、なぜ6.0×1023個か。原子や分子をその分子量や式量と同じ値の重さだけ集めると、その中には原子や分子の粒子が6.0×1023個存在することが分かった。そこで、6.0×1023個を1molと定義したのである。つまり、1molの重さはその物質の「式量」gまたは「分子量」gとなる。また1モル分の重さをモル質量という。
モル体積
標準状態において、気体1molが示す体積は、気体の種類に関係なく22.4Lである。
(注意: 固体・液体ではだめ。 標準状態とは0℃、1atm(圧力の単位)という条件。)
ポイント