1)共有結合の結晶
多数の原子が全て共有結合によって連なり、規則正しく配列している結晶を共有結合の結晶という。炭素の単体(ダイヤモンド、黒鉛など),ケイ素の単体,二酸化ケイ素SiO2,炭化ケイ素SiC等がある。炭素とケイ素はともに14族に属し、最外殻電子(価電子)が4個の非金属元素である。最外殻電子が4個のため、イオンにはならず、主として共有結合で化合物をつくる。すべての粒子が結合力の強い共有結合なので融点が高い。また、電気をほとんど導かない、かたい、水に溶けにくい(黒鉛は例外)性質がある。共有結合の結晶は多数の非金属の原子が共有結合で結合しているので、巨大分子ともいわれる。
ダイヤモンドと黒鉛
ダイヤモンドは4つの価電子全てを用いて他の炭素原子4個と共有結合している。そのため、正四面体構造がいくつも重なり合った結晶となり非常に硬くなる。 一方、黒鉛は3個の価電子を用いて他の炭素原子3個と共有結合している。そのため、平面で炭素6個が正六角形構造を形成して、その平面構造がいくつも重なり合った結晶となる。平面構造どうしは互いにファンデルワールス力(共有結合に比べるとはるかに弱い結合)によって結合しているため、ダイヤモンドよりも柔らかい結晶となる。また、黒鉛は炭素原子が価電子を1個余らせている。この余った価電子が金属結合の自由電子(次で学習)のようなはたらきをするため、電導性が生じる。
ケイ素と二酸化ケイ素
ケイ素Siは炭素と同族で、最外殻電子(価電子を)4個持っており、Si原子がダイヤモンドと同様の構造をした結晶である。しかし、ダイヤモンドの共有結合よりも結合力が弱く、光や熱によって結合の一部が切れ、そこで生じた不対電子が、自由電子のようにはたらくので、条件によって電導性を生じる。このため、ケイ素は半導体として用いられる。
二酸化ケイ素SiO2はは石英(ガラス),ケイ砂,水晶の主成分で、SiO2の正四面体構造が、繰り返し結合した形である。Si原子が正四面体の中心にあり、その頂点にO原子が結合する。これはSiO2の繰り返しで、立体網目構造の(SiO2)nの構造をした化合物である。化学的には安定で、水酸化ナトリウムNaOHや炭酸ナトリウムNa2CO3などを加えて加熱すると反応し、またフッ化水素HFの水溶液には溶けるが他の試薬とはほとんど反応しない。
2)金属結合と金属の結晶
金属結合
金属元素どうしの結合を金属結合という。金属元素は多数の原子が集まって結合し、結晶となっている。金属の原子は価電子を放出して陽イオンになりやすい。金属の原子が多数で結合するときは、まず各金属原子が価電子を放出して陽イオンになる。陽イオンどうしは反発しあうので、直接結合することはないが、放出された電子によって、陽イオンどうしが集まる。この電子は陽イオンの間を自由に動き回ることができる。このような電子を自由電子という。金属の結晶は金属のイオン(陽イオン)が自由電子によって互いに引き合って結合していることになる。つまり、金属の結晶を構成している粒子は陽イオンと電子である。
金属の特徴
金属光沢がある。これは自由電子が光を強く反射するためである。大きな熱伝導性と電気伝導性をもつ。これは、自由電子の移動によって熱や電気のエネルギーが容易に運ばれるからである。
固体の状態で、線に引くことができる延性や箔状にすることができる展性に富む。この性質があるのは、金属の結晶中の陽イオンは自由電子によって引き合っているので、粒子の位置が変わっても互いに引き合う力が変わらないからである。
3)結晶の比較
これまでに学習してきた、イオン結晶、分子結晶、共有結合の結晶、金属結晶の違いをはっきりさせておこう。
イオン結晶
多数の陰イオンと陽イオンが集まったもの
分子結晶
多数の分子が集まったもの
分子結晶
多数の分子が集まったもの
共有結合の結晶