共振(resonance)
振動とは粒子や物体の位置などの物理量が限られた範囲で周期的に変化する現象ですが、電流の方向や強さが周期的に変化する現象にも使います。
このように振動が発生するのは基本的に、あるところでエネルギーの授受が連続して行われる現象です。代表的な例として、振り子の振動は運動エネルギーと位置エネルギーが相互に交換される例です。
バイオリン弦の振動も弦に与えられている張力(弾性エネルギー(注))と弦の運動エネルギーの間で繰返されるエネルギーの授受によって引き起こされる現象です。
注) 弾性エネルギー 一般にバネやゴムなどの変形する物体が伸びるときにもつエネルギーのことで、位置エネルギーの一種。
振動する物体がエネルギーの授受をするとき、ある振動数のときに授けるエネルギーと受けるエネルギーが等しくなると外部からのエネルギーが与えられなくても振動を継続し、外部からエネルギーが加えられると振動が大きくなります。そして、エネルギーの授受に限界があるとそこで振動の大きさが制限され振動の大きさ(振幅)が一定になりますが、エネルギーの授受に限界がないと振動の大きさは破損するまで拡大します。この、振動する物体の授けるエネルギーと受けるエネルギーが等しくなる振動数のことを固有振動数(Eigenfrequency)といいます。
このように振動する物体に固有振動数に等しい振動を外部から加えたとき、その物体は非常に大きな振動をします。この現象のことを共振といいます。電気や機械の振動にたいしては一般に「共振」がよく用いられ、その周波数を共振周波数といいます。音響分野では「共鳴」がよく用いられます。
このように共振とはエネルギーを有する系が外部から与えられた刺激により固有の振動数で大きな振動を起こす現象で、共鳴も同じ原理に基づく現象です。
電気回路では、コイルとコンデンサを用いた共振回路があり、ある周波数(固有の周波数)でコンデンサの内部に電界として蓄えられたエネルギーと、コイルの内部に磁界として蓄えられたエネルギーが等しい場合にはコイルとコンデンサの間で互いにエネルギーの授受をすることが出来るために、外部からエネルギーの供給が無い状態でも電気的にエネルギーの授受(振動)が継続する現象が生じます。この共振回路に外部から固有の周波数に近い振動を与えることで共振回路が大きなエネルギーの授受(振動)をするようになります。
送信機では余分な電波の送出を低減(フィルタ回路)するのに、受信機では相手局を選択する(選局回路・同調回路)、場合や他局からの余分な電波を低減(フィルタ回路)することなどに使用されます。
また、空中線(アンテナ)においては、電磁波の波長と空中線の長さがある一定の条件を満たすと、電磁エネルギーから電波への変換効率が高くなる現象も共振といいます。
並列共振回路
コイルとコンデンサを並列に接続した回路では共振周波数で電流は減少します。
直列共振回路
コイルとコンデンサを直列に接続した回路では共振周波数で電流は増大します。
同調回路(tuning or syntony)
1898年にロッジ(Oliver Joseph Lodge)は同調回路(tuning or syntony)に関する特許(U.S. Patent 609154, "Electric Telegraphy")を取得しました。
これ以前の送信機と受信機はかなり幅広い周波数の送受信が出来ましたが、この特許は無線通信で送信するある特定の周波数にのみにエネルギーを集中させ、受信機では受信するある特定の周波数の受信感度を最大にする働きを持った共振回路を送信機と受信機に追加するもので、送信機の送信周波数と受信機の最大感度の周波数を一致させることによって通信能力を飛躍的に高めることができました。現在の送信機や受信機にも必須の回路です。
1898年ブラウン(Karl Ferdinand Braun)によって同調回路が考案されました。それは火花放電回路にコンデンサを接続し、アンテナとの接続に変圧器を使用する方法でした。
参考事項:エネルギー保存の法則(Conservation of energy)
エネルギー(Energy) とはある系(注)(例えば物体)が潜在的に持っているもので、それを外部に影響を与えることができる仕事の量(仕事量)のことで、力学的エネルギー(機械的エネルギー)として、運動エネルギー、重力による位置エネルギーがあり、その他に化学エネルギー、原子核エネルギー、 熱エネルギー、 光エネルギー、電気エネルギー、相対論的質量エネルギーがあります。これらのエネルギーは相互に交換が可能です。
注 )系(system)とは物理学・化学・生物学などで、一定の相互作用や相互連関がある、もしくはあると想定されるものの全体で、力学系・生態系・神経系・開放系などがあります。
エネルギー保存の法則(Conservation of energy)とはある系が他の系に対して仕事をした場合、仕事をした系のエネルギーが仕事をした分だけ減少し、一方、仕事をされた系はその分だけエネルギーを得て、仕事をされる前よりもエネルギーが増加します。この場合すべての系のエネルギーの合計は変化しません。