フェノール類とは、ベンゼン環に「直接」-OH基が結合した化合物のことです。
当然、フェノールがその代表例。
ここで、大事なのは、「直接」という言葉です。たとえば、これは、フェノール類でしょうか?
違いますよね。これは、アルコールです。芳香族アルコール。-OH基が直接結合してませんよね。だから、これはフェノール類ではないわけです。
フェノール類かアルコールかで、性質が異なるわけですから、この見極めはすごく大事です。では、次にそのフェノール類とアルコールとの共通点およびアルコールについて説明しましょう。
◆アルコールとの比較
~共通点~
(1) 金属Naとの反応
-OHをもつ有機物(アルコール・フェノール類など)に金属Naを加えると、反応して水素H2を発生します。
(2) エステル化反応
どちらも-OH基があるわけですから、カルボン酸を相手に、縮合によってエステルが生成します。これは【エステル化反応】の方を見てください。
~相違点~
(1) 液 性
液性とは、水溶液で酸性か中性か塩基性かということ。フェノール類は弱酸性。弱酸のなかでもかなり弱いのですが、酸性であることに変わりありません。それに対し、アルコールは中性です。
だから、たとえば水酸化ナトリウム水溶液などの塩基を加えると、フェノール類だったら中和反応を起こすわけです。それに対し、アルコールは当然何の反応も起こしません。
(2) 塩化鉄(III)水溶液 FeCl3aq による呈色反応
これが最も重要な点。フェノール類に塩化鉄(III)水溶液を加えると、青~紫色に呈色する。物質によって微妙に色が違うのですが、紫系だと思ってれば大丈夫です。
それに対し、アルコールでは全く呈色しません。この呈色反応はフェノール類のみ陽性です。
ただし、例外があります。ピクリン酸は呈色しません。これは、ニトロ基が3つついてるために、フェノール類としてよりもニトロ化合物としての性質の方が強いためと考えてください。
塩化鉄(III)水溶液で呈色=フェノール類!
◆フェノールの頻出反応
フェノールは、オルト位とパラ位が反応しやすいため、臭素化やニトロ化では一気に3つの置換基が結合します。
・臭素水を加えると、2,4,6-トリブロモフェノールの白色沈殿を生じる。
・濃硫酸と濃硝酸の混酸を加えると、ピクリン酸(2,4,6-トリニトロフェノール)の黄色沈殿を生じる。
ピクリン酸は、フェノール類であるにもかかわらず、例外的な性質をもちます。その原因は、3つもニトロ基があるために、フェノール類としてよりもニトロ化合物としての性質の方が上回ってしまうからです。ピクリン酸の液性は強酸です。先ほど説明したように FeCl3aq を加えても呈色しません。また、爆発性をもつため、昔は爆薬として使われていました。