1)酸と塩基の定義
アレニウスの酸・塩基(狭義での酸・塩基)
酸 ・・・水溶液中で電離し、水素イオンH+を生成するもの。
塩基・・・水溶液中で電離し、水酸化物イオンOH–を生成するもの。
(例) 酸 ・・・ HCl → H+ + Cl– 塩基・・・ NaOH → Na+ + OH–
☆HClやNaOH水に溶けてイオンに分離することを電離という。
ブレンステッドの酸・塩基の定義
アレニウスの定義では水溶液の場合のみである。そこで、ブレンステッドは水以外の溶媒中でも適用できるように、次のように酸・塩基を定義した。
酸・・・水素イオンH+を反応する相手に与えるもの。 塩基・・・水素イオンH+を反応する相手から得るもの。
例題 次の反応式で酸として働いている物質と塩基として働いている物質を答えよ。
① HCl + NH3 → NH4+ + Cl– 酸:HCl 塩基:NH3
② CO32- + H2O → HCO3– + OH– 酸:H2O 塩基:CO32-
2)酸と塩基の価数
酸の価数・・・1分子の酸が放出することができる水素イオンの個数
1価の酸・・・ 1分子中にH+として出せるHを1個もっている。
塩酸 HCl, 硝酸 HNO3, 酢酸 CH3COOH (酢酸のHの位置に注意)
2価の酸・・・ 1分子中にH+として出せるHを2個もっている。
硫酸 H2SO4, 硫化水素 H2S, 炭酸 H2CO3, シュウ酸 H2C2O4
3価の酸・・・ 1分子中にH+として出せるHを3個もっている。
リン酸 H3PO4
塩基の価数・・・1分子の塩基が放出することのできる水酸化物イオンOH-の個数、
あるいは1分子の塩基が受け入れることのできる水素イオンの個数。
1価の塩基・・・1分子中にOHを1個もっているか、1分子でH+を1個受け入れることができる。
水酸化ナトリウムNaOH, 水酸化カリウムKOH, アンモニアNH3(H+を受け取りNH4+になる)
2価の塩基・・・1分子中にOHを2個もっている。
水酸化マグネシウム Mg(OH)2, 水酸化カルシウム Ca(OH)2, 水酸化バリウム Ba(OH)2
水酸化銅(Ⅱ) Cu(OH)2, 水酸化鉄(Ⅱ)Fe(OH)2
3価の塩基・・・1分子中にOHを3個もっている。
水酸化鉄(Ⅲ) Fe(OH)3, 水酸化アルミニウムAl(OH)3
3)酸塩基の強・弱
酸や塩基の強弱は、水素イオンH+や水酸化物イオンOH–をたくさん放出するものが強い酸・塩基と考えられるが、2)で学習した価数で決まるものではない。HやOHを何個もっているかではなく、どれだけ電離しているかで決まる。ここで、水素イオンや水酸化物イオンをどのくらい放出しているかを考えるために電離度というものを用いる。
電解質:水溶液中で電離する物質のこと。酸・塩基も電解質になる。
電離度は、0
強酸・強塩基 (代表的な強酸,強塩基は覚えておくこと)
強酸(電離度が1に近い酸) |
強塩基(電離度が1に近い塩基) |
||
塩酸 |
HCl |
水酸化ナトリウム |
NaOH |
硝酸 |
HNO3 |
水酸化カリウム |
KOH |
硫酸 |
H2SO4 |
水酸化バリウム |
Ba(OH)2 |
|
|
水酸化カルシウム |
Ca(OH)2 |
とりあえず、これら以外は、弱酸・弱塩基としておく。
4)酸化物
酸素との化合物を酸化物というが、酸化物の中には、水に溶けてH+を生じたり、H+を受け取ったりするものがあり、酸や塩基として働くものがある。また水に溶けにくくても、塩基と反応したり、酸と反応する化合物があり、次のように分類できる。
酸性酸化物・・・水に溶けて酸性を示すか、あるいは塩基と反応する酸化物。
例 二酸化硫黄SO2,三酸化硫黄SO3,二酸化窒素NO2,二酸化炭素CO2などの非金属元素の酸化物
例えば、CO2は水溶液中で次のように反応して水素イオンを生じる。
CO2 + H2O → 2H+ + CO32-
塩基性酸化物・・・水に溶けて塩基性を示すか、あるいは酸と反応する酸化物。
例 酸化ナトリウムN2aO,酸化カルシウムCaO,酸化銅(Ⅱ)CuOなどの金属元素の酸化物
例えば、Na2Oは水溶液中で次のように反応して水酸化物イオンを生じる。
Na2O + H2O → 2Na+ + 2OH–
CuOは水には溶けないが酸とは次のように反応する。
CuO + 2HCl → CuCl2 + H2O
両性酸化物・・・酸とも塩基とも反応する酸化物
例 次の4つの金属元素(両性元素:アルミニウムAl,亜鉛Zn,スズSn,鉛Pb)の酸化物
「ああすんなり」と覚えるとよい。
酸化アルミニウムAl2O3, 酸化亜鉛ZnO,酸化スズ(Ⅱ)SnO,酸鉛(Ⅱ)PbO
例えば、Al2O3は次のように酸とも塩基とも反応する。
Al2O3 + 6HCl → 2AlCl3 + 3H2O
Al2O3 + 2NaOH + 3H2O → 2Na[Al(OH)4]
4)水素イオン濃度とpH
水の電離とイオン積
純水(中性の物質)もわずかながら次のように電離している。
ああああH2Oあ H+ + OH– ・・・①
( は反応が、右にも左にも進むという意味。このような反応を可逆反応という)
中性の水溶液中では、H+のモル数=OH–のモル数である。25℃ではその値もわかって、次のように表される。
[H+] = [OH–] = 1.0×10-7 mol/L ・・・②
([ ]はモル濃度を意味する。例 [H+]はH+のモル濃度)
また、[H+]と[OH–]の積を水のイオン積といい、Kwで表す。
Kw = [H+] [OH–] = 1.0×10-14 (mol/L)2 ・・・③ 覚える
このKw温度によって変化するが、温度一定のときは一定の値をとる。また、純水だけでなく、どんな水溶液でも一定温度ではKwは一定である。
pH(ピーエイチ)・・・水素イオン指数という。
酸性溶液や塩基性溶液での水素イオン濃度と水酸化物イオン濃度の関係は次のようになる。
酸性・・・ [H+] > [OH–] つまり [H+] > 10-7mol/L
中性・・・ [H+] = [OH–] つまり [H+] = 10-7mol/L
塩基性・・・[H+] –] つまり [H+] -7mol/L
例えば、[H+]=1.0×10-6 mol/Lの水溶液は酸性であり、
[H+]=1.0×10-9 mol/Lの水溶液は塩基性である。
しかし、指数をそのまま取り扱うのは非常に厄介である。そこで、が[H+]が1×10–nのとき、nをその溶液の水素イオン指数といい、pHの記号で表す。
pH |
1 |
2 |
3 |
4 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
[H+] |
10-1 |
10-2 |
10-3 |
10-4 |
10-5 |
10-6 |
10-7 |
10-8 |
10-9 |
10-10 |
10-11 |
10-12 |
10-13 |
[OH–] |
10-13 |
10-12 |
10-11 |
10-10 |
10-9 |
10-8 |
10-7 |
10-6 |
10-5 |
10-4 |
10-3 |
10-2 |
10-1 |