この図を見ると、中央に、はっきりとした輪郭をもつ三角形が見える。ところが、目を近づけて見てみると、三角形の輪郭などどこにも描かれていないことが分かる。このように、等質の領域に見える輪郭を主観的輪郭という。
この図では、主観的輪郭が描く三角形が背景の白よりも一層白く見える。この図の黒と白を反転した場合にもカニッツアの錯視は起こり、その場合には、主観的輪郭が描く三角形が背景の黒よりも一層黒く見える。
なぜ客観的には存在しない、見えないはずの輪郭が見えるのか。イタリアの心理学者カニッツアによれば、眼はいつも意味のある単純な形を求めている。眼前に複雑で、意味を見つけにくいものが見えているとき、眼は不安定になる。この図を、何かによって一部が覆い隠されていると理解し、その隠しているものの形を見定めようとすることによって、眼は安定するのである。
直線だけでなく、このような曲線でも主観的輪郭が見える。