ハロゲンとは:性質・状態・色などの特徴を解説

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1 H                                 He
2 Li Be                     B C N O F Ne
3 Na Mg 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 Al Si P S Cl Ar
4 K Ca Sc Ti V Cr Mn Fe Co Ni Cu Zn Ga Ge As Se Br Kr
5 Rb Sr Y Zr Nb Mo Tc Ru Rh Pd Ag Cd In Sn Sb Te I Xe
6 Cs Ba Hf Ta W Re Os Ir Pt Au Hg Tl Pb Bi Po At Rn
7 Fr Ra              

 ハロゲンは17族の元素すべてを指します、が実際問題に出るのはF,Cl,Br,Iの4つです。アスタチンAtは全くといっていいほど問題には出ないんで、無視してていいです。最外殻電子が7コなので、あと1コ電子があれば安定な希ガス配置になる。単体としては共有結合によって希ガス配置となり、化合物としてはイオン結合によって一価の陰イオンとなりやはり希ガス配置になることで安定化します。

 ハロゲンは族の中で最も頻出です。4つの元素それぞれに対する単体及び水素化合物について、確かな知識をもつことが求められます。まずは、それぞれの単体の性質を見比べてみましょう。

単体
状態
融点
沸点
酸化力
フッ素 (F2)
気体
淡黄色
-220
-188
塩素 (Cl2)
気体
黄緑色
-101
-34
 
臭素 (Br2)
液体
赤褐色
-7
59
 
ヨウ素 (I2)
固体
黒紫色
114
184

 

 まず、状態と色は完璧に覚えましょう。状態については、フッ素と塩素が気体で、臭素が液体、ヨウ素が固体です。ちなみに元素の単体が常温で液体なのはこの臭素と水銀だけですね。色についてもそれぞれ別の色をもつので資料集などを用いて感覚的に覚えてみましょう。色は文字で覚えるよりも色そのものを見たほうが覚えやすいです。積極的に資料集を利用しましょう。

 

 融点と沸点は、数字そのものは覚える必要はありません。ただ、下に行くにつれてだんだんと大きくなっていることぐらいは知っておいてほしい。なぜそうなるかちゃんと説明できますか? 理論化学の最初の方で学習しているはずです。ちょっと確認してみましょう。まず、融点・沸点が高くなるというとは、分子間力が大きくなっているということです。分子間力が大きいほど、分子間の結合を切るのに必要なエネルギーが必要とされるからですよね。ではなぜ下に行くほど分子間力が大きくなるのかというと、それは分子量が大きいほどファンデルワールス力が強く働くからです。

 

 酸化力は、よく問題にでます。でも、酸化力が一番強いのはどれか?なんて簡単な問題はなかなか出してくれません。たとえば、以下のような形で出てきます。

 

 例題) 次の反応のうち、進行するものをすべて選べ。

 

 a) 2KCl+Br2→2KBr+Cl2

 b) 2KI+Cl2→2KCl+I2

 c) 2KF+I2→2KI+F2

 

 わかりますか?酸化力の知識さえあれば、すぐにこれが解けます。

 

 問題を解く前に、「酸化力」とは何かを確認しましょう。「酸化力」とは、相手を酸化させることのできる力、ですよね。自分が酸化するんではないですよ。ここらへんがはっきりしていない人は理論化学の「酸化・還元」をしっかりと復習しておきましょう。相手が酸化されるということは、自分は還元されるということ。さて、還元とは電子を放出することですか?受け取ることですか? 受け取ることですよね。つまり、ハロゲンにとってみれば単体が電子を受け取って陰イオンになることが還元そのものなんです。以上をまとめると、

 

ハロゲンでは、、、酸化力が大きい=陰イオンになりやすい

 

 問題を見ていきましょう。まず a) について。塩素はCl-で陰イオン、臭素はBr2で単体ですね。塩素は臭素よりも酸化力が大きいんだから、塩素の方が陰イオンの状態でいたい。つまりこの時点で十分安定な状態なわけです。だから、もしこの反応が進行してしまったら臭素が陰イオンで塩素が単体という不安定な状態になってしまう。エネルギー使ってまでわざわざそんな状態にはならない。だから、この反応は進行しません。

 

 b) 同様に見ていきましょう。ヨウ素が陰イオンで塩素が単体。ヨウ素よりも陰イオンになりたい塩素にとってこんな理不尽なことはない。だからヨウ化物イオンから電子を奪い取って自分は陰イオンに、ヨウ素は単体になる。安定な状態になることができました。ですから、この反応は進行する。

 

 c) 同様に考えると、この反応は進行しません。

 

 結局答えはb)のみですね。

 

 

 次に、各単体の詳細について触れていきましょう。

 

 ◆フッ素

 

 フッ素は刺激臭のある淡黄色の気体、なんですがあまりにも反応性が高いために単体そのものを観察することは非常に困難です。資料集でも代わりに文字で書いてあるはずです。酸化作用が非常に強力で、水とも激しく反応してフッ化水素を生じます。

 

2F2+2H2O→4HF+O2

 

 ◆塩素

 

 塩素は刺激臭のある黄緑色の気体。

 塩素の製法は頻出です。これについては【気体】に書いてあります。1つは酸化マンガン(IV)に濃塩酸を加えて加熱、もう1つはさらし粉に希塩酸です。

 

MnO2+4HCl→MnCl2+2H2O+Cl2↑

CaCl(ClO)H2O+2HCl→CaCl2+2H2O+Cl2↑

 

 特に、前者の反応式は本当によく書かせます。しかも発生装置についてもそのまま問題に出ることが少なくないです。ここでは図が書けませんが(すみません・・・)資料集や参考書などで必ずチェックしてください。2つの洗気びんのどちらが水でどちらが濃硫酸か、またなぜそうするか、それぞれの役目は何かなどすべて説明できるようにしておくこと。化学系の学科を受ける人は何も見なくても実験装置が完璧に書けるようにしておこう。

 

 塩素が水に溶けることで示す性質として、酸性と強い殺菌・漂白作用を示します。塩素は水に少し溶けて、一部が以下のような反応をします。

 

Cl2+H2O→HCl+HClO

 

 塩化水素が生じるため液性は酸性を示し、さらに次亜塩素酸HClOが生じるので強い殺菌・漂白作用を示します。原因はCl2そのものではなく、生じるHClOによる性質なんです。ここで、塩素のオキソ酸について触れてみます。センターではまず出ませんが、二次を受ける人は知っておいた方がいいです。とりあえず名称と化学式くらい書ければ十分です。

 

名称
化学式
Clの酸化数
酸化力
酸性
次亜塩素酸
HClO
+1
亜塩素酸
HClO2
+3
   
塩素酸
HClO3
+5
   
過塩素酸
HClO4
+7

 ◆臭 素

 臭素の単体としての知識は、そんなに出ないので状態が常温で液体だということ、色が赤褐色だということぐらいで十分です。

 ◆ヨウ素

 ヨウ素は常温で固体で、黒紫色をしています。また昇華性があり、加熱すると紫色の蒸気になります。この性質を利用して、ヨウ素の精製が行われます。昇華による精製実験装置もときどき見かけるので、資料集や参考書でチェックしておいてください。

 ヨウ素は水に難溶ですが、ヨウ化カリウム水溶液KIには非常によく溶けて褐色の溶液になります。これは、ヨウ素I2がヨウ化物イオンI-と反応して三ヨウ化物イオンI3-が生じるからです。

I2+I-→I3-

 三ヨウ化物イオンが褐色なので、溶液は褐色に見えたわけです。この話は難しい部類に入りますが、実は結構入試で出るので知っておきましょう。

 最後に、化学2の多糖類でも出てくるヨウ素デンプン反応についても確認しましょう。ヨウ素溶液をデンプン水溶液に加えると青紫色になります。このことからデンプンの検出によく用いられます。小学校の時に、切ったジャガイモにヨウ素溶液を垂らす実験しませんでした?あれがまさにこの反応なんです。デンプンはらせん構造をしているため、この中にヨウ素分子が入り込むのが呈色の原因です。

 ◆ハロゲン化水素

 ハロゲンは単体だけでなく、ハロゲン化水素HXについてもよく出題されます。

ハロゲン化水素
沸点
液性
フッ化水素(HF)
20
弱酸
塩化水素(HCl)
-85
強酸
臭化水素(HBr)
-67
強酸
ヨウ化水素(HI)
-35
強酸

 まず共通点として、すべて有毒な無色・刺激臭の気体です。また水によく溶けます。特に塩化水素水溶液は、「塩酸」として有名ですね。また水溶液中ですべて酸として働きます。ただし、フッ化水素酸のみ弱酸です。あとは全部強酸。塩酸HClaqだけでなく、臭化水素酸HBraqとヨウ化水素酸HIaqも強酸であることに注意してください。

 

 ◆フッ化水素

 1) 沸点と水素結合

 フッ化水素でまず聞かれることは、沸点の異常性です。基本的に分子量が大きいほど沸点は上昇するはずですが、ハロゲン化水素の中で最も分子量が小さいはずのHFが最も大きい沸点を示す。これはなぜか?理論化学をちゃんと勉強してきた人ならすぐに答えられますよね?

 分子間が水素結合によって結合するためです。HとFの電気陰性度の差があまりにも大きいがために、分子間力に静電気的な引力がプラスされる。この水素結合はどの分子にも存在するファンデルワールス力よりもはるかに大きいから、分子量の小ささなど関係なくなってしまうわけです。

 2) 弱酸性

 フッ化水素酸が弱酸であることも水素結合の存在によって説明できます。弱酸とは、電離度が小さい酸のことです。ばらばらになってH+がたくさん生じれば強酸になれるわけですが、水素結合によってずらずらと分子同士がくっついているから、わざわざ水素結合を切ってまでH+を作りたくない。だからフッ化水素はほとんどが分子のままでいて、電離しているHFは少なくなるわけです。ちなみに電離度は約0.10です。

 3) ガラスとの反応

 ガラスの主成分は二酸化ケイ素SiO2です。非常に安定で大方の薬品と反応しませんが、フッ化水素酸は反応します。つまり、ガラスを溶かしてしまうんですね。ですから、保存する際はガラス容器は使えません。代わりに、ポリエチレン容器に保存することになります。

水溶液中…SiO2+6HF→H2SiF6+2H2O
気体…SiO2+4HF→SiF4+2H2O

 反応式を書かせるのは、上側のフッ化水素酸(水溶液)として反応した場合ですが、一応フッ化水素(気体)で反応する場合についてもあわせて書いておきました。H2SiF6はヘキサフルオロケイ酸とよびます。こちらの反応式は書けるようにしておくことをオススメします。

 ◆塩化水素

 

 塩化水素は非常に水に溶けやすいので、そのものとしてよりも水溶液としての塩酸の方が知られてますね。あまりにも有名なのでここではそんなに説明は加えません。 

 

 1) 製法

 

  まず製法ですが、塩化ナトリウムと濃硫酸を加えて加熱する、という方法が一般的です。

 

 NaCl+H2SO4→NaHSO4+HCl↑

 

 この反応式書くときに必ずやってしまうのは、2NaCl+H2SO4→Na2SO4+2HClと書いてしまうこと。生成するのは硫酸ナトリウムNa2SO4ではなく、硫酸水素ナトリウムNaHSO4ですね。

 

 2) アンモニアとの反応

 

 それと、よく聞かれるのがアンモニアNH3との反応です。

 

HCl+NH3→NH4Cl

 

 反応自体は単なる酸塩基反応ですが、それによって生じる塩化アンモニウムNH4Clがごくごく小さな粒状の固体として生じるから、全体として白煙が生じたようにみえるんです。だから、気体の問題で、「白煙が生じた」という文が出てきたらHClとNH3が反応しているんだな、と考えてまず間違いないです。