空中線の原理について解説

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電荷粒子に加速度が働くと、基本的にはそれによって受け取ったエネルギーに等しいエネルギーを持った電磁波を発生します。なぜそのような現象が発生するのか、その理由はわかりません。アンテナはこの原理を応用したものです。

 

荷電粒子とは 電荷を持った粒子のことで、主に電子と陽子です。通常、陽子は原子の中にあり、電子に比べ非常に重いことからほとんど移動しないので、電荷を運搬する役目(電流)を果たすことはできません。また、電子も原子の構成要素になっているので、ほとんど移動できませんが、金属等の結晶中には自由に移動できる自由電子が存在します。自由電子は電界によって動かされることから電荷を運搬する役目を果たすことができます。

電線の両端に電位差があると、その間に電界が発生し、その電界によって自由電子が加速され移動します。それが電流が流れるということでます。一般に電線(金属)等では、その中の自由電子の大群が移動することで、電流(電荷(自由電子)の移動)が流れ、その電流はエルステッドの実験(エルステッドの実験)のように磁界を作ります。その磁界の強さは電流の大きさに応じて変化します。

 

マックスウエルはマクスウエルの方程式で磁界の時間的な変化が電界を発生させ、電界の時間的な変化が磁界を発生させ、このような磁界と電界の時間的な変化は連鎖的に繰返されることが示されています。この連鎖的に繰返されることから電磁波の存在を予測しています。そして、その電磁波の進行速度を計算した結果は光の速度に等しかったのです。このことから、光は電磁波の一種であると考えられました。

この予測を確認したのがヘルツです。電磁波の発生装置と検出装置を作り、電磁波の存在を実証的に確認(ヘルツの電磁波の確認実験)しました。

 

空中線はアンテナ(Antennaまたはaerial)ともいい、電磁波の送出や受信に使用され、電気エネルギーを効率よく電磁波として空間に放射する働きを持ち、また、空間を移動している電磁波を効率よく電気エネルギーに変換する働きを持っています。

 

ダイポールアンテナの場合、2本のアンテナ線の中間に電池を接続して電圧を加えると、アンテナ線の電圧は最初「零」ですので、アンテナ線の中央に電圧が掛かると上部(+)と下部(ー)の間に電位差生じ、その電圧の差によって電界が生じます。その電界は光の速度でアンテナ線に沿って終端まで進行します。

また、電池を接続する前のアンテナ線には電圧がありませんので、電界が進行する先端部分では局部的に電位差ができ、その部分ではアンテナ線の自由電子が加速され移動を始めます。自由電子が移動する(電流が流れる)と、それによって磁界が作られますが、電界がアンテナ線の終端に到達するとアンテナ線の電圧が均一に成るので、アンテナ線の電位差が無くなり磁界は消滅します。

 

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電池の代わりに高周波電源を接続し、アンテナ線の長さを高周波電源の発生する波長(λ)の1/4の長さにすると、高周波電源によって自由電子を効率よく加速することができます。

最初の1/2波長では上部のアンテナ線が正(+)に、下部のアンテナ線が負(-)に成ることから上から下向きの電界が発生し、この電界によって自由電子は下から上方向に向かって加速され、アンテナ線の末端までに減速されます。次の1/2波長では逆に自由電子は上から下方向に加速され、アンテナ線の末端までに減速されます。この加速・減速のエネルギーに対応する周波数の電磁波が自由電子から放出されます。

 

空中線(アンテナ)は基本的に送信と受信に共用できます。

送信アンテナは送信機からの高周波電気エネルギー(電圧と電流)の周波数に応じて電子が十分に加速され、減速されるだけの距離が必要で、高周波電気エネルギーがアンテナの導線に送られると、導線に沿って電界が発生し、その電界によって電子が加速されて移動することから、磁界が発生します。その磁界によって電子は減速され、電磁波を放出します。高周波電気エネルギーは電磁波に変換されて空間に放出されます。電磁波は空間を光の速度で進行します。

 

受信アンテナは電磁波の電界と磁界によって、アンテナの導線中の電子が加速、減速され、これによって電圧と電流が発生します。このようにアンテナは電磁波を電気エネルギーに変換します。それを検出するのが受信機です。