基本単位の定義
長さ
国際メートル原器は白金とイリジューム合金によるX形の断面形状をした金属の棒で、両端に細い線が引かれておりこの線の間隔を1mとする。
1960年から
クリプトン(86)ランプが発する橙色のスペクトル線の真空中での波長の165万763.73倍
1983年から
光が真空中で2億9979万2458分の1秒の間に進む距離 精度は2×10-11
重さ
白金90%とイリジューム10%の合金による国際キログラム原器を1kgとする。 精度は2×10-9
時間
秒はセシューム(133)原子の基底状態の超精密構造間の遷移に対応する放射の周期の91億9263万1770倍とする。
超精密構造間には2つの状態がありどちらか一方の状態にあり、9,192,631,770Hzに近い周波数の電磁波を照射すると原子はその電磁波に共鳴して、もう一方の状態に遷移する。常に最も共鳴するように電磁波の周波数を制御するのが原子時計である。
精度は2×10-15
電流
アンペアは真空中に1mの間隔で平行に置かれた無限に小さい円形断面積を有する無限に長い2本の直線状導体のそれぞれを流れ、これらの導体の長さ1mごとに2×10-7Nの力を及ぼし合う一定の電流である。
熱力学温度
ケルビン(K)は水の3重点の熱力学温度の1/273.16である。
物質量
モル(mol)は炭素12を集めて0.012kgとするのに必要となる原子の数と等しい個数の要素粒子の集合体が持つ物質量である。
光度
カンデラ(cd)は周波数540×1012Hzの単色放射を放出する光源の放射強度が1/683W・sr-1である方向における光度である。
電圧と抵抗の実用標準
電気の基本単位の定義は電流ですが、実用的には使用しにくいことから電圧と抵抗の標準が使用されています。
電圧の実用標準は交流ジョセフソン効果(超伝導材料によるジョセフソン素子に電磁波を照射する)を利用しています。
ジョセフソン素子に周波数f[GHz]の電磁波を照射したときに取り出される量子化電圧Vは,Vn=nf/KJ-90[V]の値をもつものとする。ここで,nは整数,KJ-90はジョセフソン定数KJの1990年協定値でKJ-90=483597.9[GHz/V]と定義されテいます。
ジョセフソン素子(Josephson device)
ジョセフソン素子は、2個の超伝導体の間に絶縁体か常伝導金属薄膜を接合したものです。
超伝導体は極低温で動作するため、素子を液体ヘリウムで冷却したジョセフソン素子に電流を流すとトンネル電流が流れますが、ある電流値を超えると、電圧が発生し、その電圧に比例した周波数の電流が発生します。
交流ジョセフソン効果
ジョセフソン素子に、周波数f の電磁波(マイクロ);を照射すると、周波数に比例した電圧がステップ状に変化する(Vn = (h/2e)・n・f h はプランク定数 e;は単位電荷 n;は整数)直流電圧(V;量子化電圧)が素子に現れ、電流もステップ状に変化する現象を、交流ジョセフソン効果といい電圧標準の基本原理として用いられます。
抵抗の実用標準
高磁場,極低温下で半導体の示す量子化ホール抵抗RHは,RH=RK-90/i[Ω]の値をもつものとする.ここで,iは整数,RK-90はフォン・クリティング定数で、RKの1990年の協定値で,RK-90=25812.807[Ω]と定義されています。
ホール効果 (Hall effect)は、1879年、エドウィン・ホールによって発見された現象で、半導体に電流を流し、磁場をかけるとそれと直角方向に電圧が発生する現象です。半導体に生じるホール(Hole、正孔)とは日本語では呼び方は同じですが異なるものです。
量子ホール効果(Quantum Hall effect)
1980年にフォン・クリティング(von Klitzing)により発見されました。
シリコン電界トランジスタのチャネルのように深さ方向に電子が移動できる構造で、電子が移動できる距離が電子の波長程度以下だと電子が移動できるエリア(伝導層)は平面のように(二次元伝導層)なり、この面に垂直に磁場をかけると磁場にも電流にも垂直な方向に電圧が発生します。
一様な磁場中で荷電粒子(電子)が運動していると磁場によって進路が曲げられ円運動(サイクロトロン運動)をします。この時のサイクロトロン運動の角振動数(サイクロトロン周波数)は電子の持つ運動エネルギーに関係しますが、極低温下で磁場の強さを強くしていくと初めは連続的に変化していますが、ある程度以上磁場が強くなると、運動エネルギーが飛び飛びの値を取るようになります。この現象をサイクロトロン運動の量子化といい、このとき発生する電圧を量子化ホール電圧,量子化ホール電圧と電流の比を量子化ホール抵抗といいます。