鉛蓄電池の動作原理を解説

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放電とは電解液中の硫酸が極板に移動すること、充電とは極板から電解液中に硫酸が移動することである。
そのため、放電すると電解液の比重は低下し、逆に充電すると上昇します。しかし比重値は液温(電解液の温度)によって補正する必要もあり、正確な充電状態を把握する目安です。

 発生する電圧は1セルあたり2ボルトと、比較的高い電圧を取り出すことができ、材料の鉛も安価であることから、二次電池の中では最も生産量が多く、短時間で大電流放電させたり、長時間緩やかな放電を行っても比較的安定した特性が得られますが、硫酸を使うために破損したときなどに危険が伴うのと、他の蓄電池に比べて大型で重くなる欠点があります。

放電時の動作

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放電時の動作:1

 鉛板を電解質溶液(希硫酸:硫酸イオンSO4(–)と水素イオンH(+))に入れると鉛が溶解して鉛イオンPb(++)が流出します。

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放電時の動作:2

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鉛イオンPb(++)は電解液中の硫酸イオンSO4(–)と引き合い、陰極(鉛)と導線で陽極(二酸化鉛)を結ぶと陰極に蓄積された電子が陽極に流れ、電解液中で過剰になった水素イオンH(+)が電極に引き付けられます。

放電時の動作:3

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溶解した鉛イオンPb(++)は電解液中の硫酸イオンSO4(–)と反応して硫酸鉛(Ⅱ)PbSO4になります。電解液中の水素イオンH(+)が陽極に接触すると電子を受け取って電荷が中和され、電気的に中性の水素原子になります。

放電時の動作:4

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  水素原子は陽極の二酸化鉛と反応し水になります。酸素を取られた鉛Pbは電解質溶液中の硫酸イオンSO4(–)と反応して硫酸鉛(Ⅱ)PbSO4になります。

放電時の反応式

陰極 Pb+SO4(–)→PbSO4 + 2e(-)
陽極 PbO2 + 4H(+) + SO4(–) + 2e(-) → PbSO4 + 2H2O

充電時の動作

 

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 充電時の動作;1

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 鉛電極では溶解による鉛イオンの発生よりも、高い電圧を電極間に与えることで陰極には電子が非常に多い状態になり、電解質溶液中にある鉛イオンPb(+)を引き付ける力が強くなり、溶解する鉛イオンの数よりも多くの鉛イオンが鉛電極に引き付けられ、電子を与えられて鉛原子になって電極に付着します。

  陽極では外部から電圧が加えられ電子が欠乏した状態(正の電荷を持つ)になり、水が分解され水酸化イオンOH(-)が陽極に引き付けられ、電解質溶液中に水素イオンが取り残されます。

充電時の動作;2

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 電解質溶液中の鉛イオンが少なくなると水素イオンが硫酸鉛(Ⅱ) PbSO4と反応して希硫酸になり、鉛イオンが作られます。陽極の水酸化イオンOH(-)は電極に接触すると電子を電極側に放出し、水酸化物(OH)になります。
(拡大図を参照してください)

充電時の動作;3

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  陽極の水酸化物(OH)は互いに結合して水と酸素原子になります。

充電時の動作;4

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  充電時の動作;1陽極の酸素原子は硫酸鉛(Ⅱ) PbSO4と反応して二酸化鉛 PbO2になり、電極に付着します。その結果、電解溶液中に硫酸SO4が流出し水と結合して希硫酸H2SO4(電解質)に戻ります。

電解溶液中に硫酸SO4が流出することで硫酸の濃度が増加し、電解質溶液の比重を上げることから、比重を測定すれば充電が十分にされていることを判断することができます。

充電時の反応式

陰極 PbSO4 + 2e(-) → Pb + SO4(–)
陽極 PbSO4 + 2H2O → PbO2 + 4H(+) + SO4(–) + 2e(-)