磁極とはなにか

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 磁石の両端は引き合ったり、反発しあうなど異なる性質をもっていて、この磁気的な性質を磁極(じきょく magnetic poles)といいます。地球そのものも磁石(地磁気)であり、このため方位磁針(羅針盤、コンパス)で北を指す極をN極、南を指す極がS極です。地球の北極は磁気的にはS極で、南極は磁気的にはN極ですので、これによって方位磁針で方位を知ることができるのです。

 一般に鉄は磁気を帯びていませんが磁石を近づけると吸い付くのは、鉄の中に小さな磁石(磁区、磁気双極子)が存在していて、磁界が無いときには不規則な方向に向いていますが、それに磁石を近づけると、鉄の中にある小さな磁石(磁区)は外部からの磁界の方向に揃えられることで、鉄が磁石になり(磁極が生じ)、それによって引き付けられる力(磁力)が生じることから鉄が磁石に吸い付けられる現象が生じると考えられています。この小さな磁石は電子が持っているスピンという電子の本質的な性質によって作られることが解かっています。

小さな磁石(磁区)

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  磁石の源泉は電子のスピンが磁気モーメント(磁気による物を回転させようとする力)を作ることに起因しています。
 一般に原子を構成する電子は原子核の周りを回(電子の軌道)っているのですが、ステルン・ゲルナッハの実験によって電子には2種類のスピンがあり、上向きのスピンと下向きのスピンがあり、原子に含まれる電子全体としてはほぼ同数になっていますが、どちらかに偏っているものがあり、このスピンの偏りが強い磁性を示す原因です。
 ある物質の中では個々の原子のスピンの方向は通常ばらばらの方向を向いていますが、外部からの磁界によって、その方向が外部磁界の方向に沿って整列することで磁気を帯びる性質(磁性)が現れます。
 電子のスピンの偏りは原子の電子配列によって決まっていますので、物質毎に磁気の性質が異なり、外部からの磁界の方向に電子のスピンが整列するものを常磁性(paramagnetism)と呼び、反対のものを反磁性(Diamagnetism)といいます。
 特に磁性の強いものを 強磁性(ferromagnetism)と呼び、その反対を反強磁性(antiferromagnetism)と呼びます。
 例えば、鉄原子の周りにある電子のスピンが下図のように偏っていることによって、鉄の内部に発生した磁界の方向が、磁石の磁界の方向に揃えられることによって磁極が作られ、外部の磁石が作る磁界との間に磁気力が発生するためです。 同様なスピンの偏りはコバルトやニッケルにもあります。

鉄原子の電子スピン配列

 

 

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