暗放電について解説

シェアする

 気体分子は中性で、結合がなく、個々の分子は互いに離れていることから、電気を通すのに必要な自由に移動できる電子やイオンが存在しませんので、気体中に電極を置いて、それに電圧をかけても電流は流れません。しかし、詳細に見ると極僅かですが微弱な電流が流れます。それは宇宙線や自然放射能等が気体分子に衝突して気体分子をイオン化し自由に移動できる電子(自由電子)と正イオンが作られ(電離作用)ていて、これらが電極間の電界によって力を受け(クーロン力)、電極に向かって移動すると、極僅かな電流が流れます。これを暗流、または暗電流といいます。

 

f:id:BNB:20190420150542g:plain

 

 大気中において自然に発生する宇宙線や自然放射能(荷電粒子)等の数は1秒間に10個から20個/立方センチメートル程度存在していて、通常大気中ではこの荷電粒子により1000個から2000個/立方センチメートルの分子が電子と正イオンに分離(電離)されています。
大気中に置かれた電極に電圧をかけて順次上昇させると、この電子と正イオンが電極に引き寄せられ、極僅かな電流が流れます。ある一定の電圧を超えると電極間に発生する全ての荷電粒子が電極に引き付けられることから、それ以上電流の増加が無くなり、電流の値が一定で飽和状態(プラトー)になります。
  飽和状態になってから、電極間の電圧を更に上げると、自然に存在する荷電粒子によって作られた電子や正イオンが高電圧によって加速(運動エネルギーの増加)されて、気体分子や電極と衝突して電子をはじき出すことができるようになります。
  電子の運動エネルギーは電界の大きさと走行距離(加速時間)に比例します。つまり、気体である分子が存在する空間の中で電子が電界によって加速されながら走行し、気体分子に衝突するまでの距離に電子の運動エネルギーは比例します。そして、衝突する電子の運動エネルギーの大きさがある一定の値を超えると分子(原子)から電子を弾き出す電離が発生します。分子の種類によって電離しやすいものとしにくいものがありますが、電離した電子と電離された電子が、更に次の気体分子に衝突して、2個が4個、4個が8個のように鼠算式に電子が急激に増加する現象(電子雪崩)が発生し、大きな電流が流れる(絶縁破壊)ようになります。これが、放電現象の基本的なメカニズムです。このような現象を放電といい、その形態によってグロー放電、アーク放電などがあります。