単量体を人工的に、付加重合や縮合重合によって、多数結合させ作られた高分子化合物を合成高分子化合物という。合成繊維・合成樹脂・合成ゴムなどがある。
1)合成繊維
石油から得られる低分子化合物(単量体)を重合させ、高分子にして、紡糸することで繊維構造を形成させたもの。
ナイロン(ポリアミド)
重合体 |
単量体 |
反応形式 |
6,6-ナイロン |
アジピン酸 HOOC-(CH2)4-COOHヘキサメチレンジアミン H2N-(CH2)6-NH2 |
縮合重合 |
6-ナイロン |
カプロラクタム |
開環重合 |
6,6-ナイロンは、アジピン酸の-COOHとヘキサメチレンジアミンの-NH2との間で脱水すると、縮合重合が起こり生成する。重合体には多数のアミド結合-CO-NH-ができるので、ポリアミドとよばれ、広く利用されている。6-ナイロンは、環状構造を持つカプロラクタムの-CO-NH-が切れ開環し、これが多数重合することによって生成する。
ポリエステル
重合体 |
単量体 |
反応形式 |
ポリエチレンテレフタレート |
エチレングリコール HO-CH2-CH2-OH テレフタル酸 |
縮合重合 |
ポリエチレンテレフタレートは、エチレングリコールの-OHとテレフタル酸の-COOHとのの間で脱水すると、縮合重合が起こり生成する。重合体には多数のエステル結合-COO-ができるので、ポリエステルとよばれる。乾きやすく、しわになりにくい合成繊維である。
アクリル
重合体 |
単量体 |
反応形式 |
ポリアクリロニトリル |
アクリロニトリル CH2=CH-CN
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付加重合 |
ポリアクリロニトリルは、アクリロニトリルの付加重合によって生成する。アクリロニトリルを主成分とする合成繊維をアクリル繊維といい、アクリロニトリルに酢酸ビニルなどのビニル基CH2=CH-を持った化合物を混ぜて、付加重合させた繊維を総称して、アクリル系繊維という。肌触りが羊毛に似た合成繊維である。
ビニロン
重合体 |
単量体 |
反応形式 |
ビニロン |
酢酸ビニル CH2=CH-OCOCH3 ホルムアルデヒド HCHO |
付加重合と 縮合重合 |
ポリ酢酸ビニルをポリビニルアルコールとし、これにホルムアルデヒドを作用させると、一部の-OHとホルムアルデヒドが縮合して、-O-CH2-O-となる(アセタール化という)。ビニロンには-OHが残っているため、適当な吸水性があり、木綿に似た感触で軽く、耐摩耗性に優れている。
2)合成樹脂
合成樹脂は、一般的にプラスチックとよばれる。プラスチックとは可塑性(変形しやすい)という意味で、加熱によって軟らかくなり形成できる物質をいう。
熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂
可塑性樹脂とは、合成繊維と同じように線状構造をもつ高分子化合物で、熱を加えると軟らかくなり、冷やすと硬くなる樹脂で、使いやすので、広く利用されている。熱硬化性樹脂は立体的網目構造をもち、加熱しても軟らかくならない樹脂である。熱硬化樹脂は食器・家具・家電製品や接着剤に用いられる。
主な合成樹脂
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重合体 |
単量体 |
反応形式 |
熱可塑性樹脂 注1 |
ポリエチレン |
エチレンCH2=CH2 |
付加重合 |
ポリプロピレン |
プロピレンCH2=CH-CH3 |
付加重合 |
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ポリスチレン |
スチレン |
付加重合 |
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ポリ塩化ビニル |
塩化ビニル CH2=CH-Cl |
付加重合 |
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メタクリル樹脂 |
メタクリル酸メチル CH2=C(CH3)-COOCH3 |
付加重合 |
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フッ素樹脂 |
テトラフルオロエチレン CF2=CF2 |
付加重合 |
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熱硬化性樹脂 |
フェノール樹脂 |
フェノール,ホルムアルデヒド |
縮合重合と付加 注2 |
尿素樹脂(アミノ樹脂) |
尿素,ホルムアルデヒド |
縮合重合と付加 注3 |
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メラミン樹脂(アミノ樹脂) |
メラミン,ホルムアルデヒド |
縮合重合と付加 注4 |
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シリコーン樹脂 |
ジクロロメチルシラン トリクロロメチルシラン |
縮合重合 注5 |
注1
熱可塑性樹脂は付加重合で合成されるものが多いが、縮合重合で合成されるナイロン,ポリエステル,ポリカーボネートなどもある。
注2
フェノールとホルムアルデヒドが反応(この場合、付加反応である)してアルコールとなる。これが縮合重合して、ノボラックやレゾールとなり、フェノール樹脂となる。
注3
尿素とホルムアルデヒドが反応して(この場合、付加反応である)してアルコールとなる。これが縮合重合して尿素樹脂となる。
注4
尿素樹脂と同様にメラミンとホルムアルデヒドが反応して(この場合、付加反応である)してアルコールとなる。これが縮合重合してメラミン樹脂となる。
☆フェノール樹脂,尿素樹脂,メラミン樹脂は付加反応が起こってから、重合するの、で付加縮合ということもある。
注5
機能性樹脂
・イオン交換樹脂
陽イオン交換樹脂
分子中に、カルボキシル基-COOHやスルホ基-SO3Hなどの酸性基を多く持った樹脂。溶液中の陽イオンをH+に交換する。代表的なものにスチレンC6H5-CH=CH2とp-ジビニルベンゼンCH2=CH-C6H4-CH=CH2の共重合体をスルホン化したものがある。
陰イオン交換樹脂
分子中に、水酸化アルキルアンモニウムR3NOHを多く持つ樹脂が代表的なもので、溶液中の陰イオンをOH–に交換する。
・シリコーン樹脂
耐熱性・耐水性・電気絶縁性に優れる。塗料,自動車のワックス,電気絶縁体に用いられる。
・フッ素樹脂
耐熱性・耐薬品性に優れる。コーティング剤等に用いられる。
・高級水性樹脂
アクリル酸塩CH2=CH-COONaの重合体で三次構造(網目構造)となる。吸水により、-COONaが電離すると、-COO–間で反発し網目が拡大し、そのすきまに水が入り込む。入り込んだ水分子は樹脂と水素結合によって、結合する。
・伝導性樹脂
アセチレンCH≡CHを付加重合させたポリアセチレンに、ヨウ素の蒸気を吸わせると、金属に近い伝導性が現れる。これは日本の白川英樹の研究によって発見された。これにより、2000年度のノーベル化学賞を受賞した。
プラスチックの特徴と問題点
①生物分解性プラスチック
プラスチックは、「軽く・強く・腐らず・さびない」という利点がある。しかし、廃棄されたプラスチックの一部は回収されるが、自然界に残ったプラスチックはこの性質のため、土壌中で分解されず河川や海洋に流出され生物に危害を及ぼす。この問題を解決するため、生物分解性プラスチックが注目されている。以下のものが開発されている。
・デンプンやセルロースなどの天然高分子由来のもの
・微生物が作る高分子を利用したもの
・化学合成による脂肪酸ポリエステルを利用したもの
②リサイクル
石油資源の有効利用,ゴミ問題の観点から、プラスチックの再利用(リサイクル)は重要課題であり、現在、以下のような方法がとられている。
・製品リサイクル
製品をそのまま再利用する。もっとも望ましい方法である。
・マテリアルリサイクル
加熱形成し直して、再利用する。
・ケミカルリサイクル
単量体(原料)まで分解し、それを再利用する。
・サーマルリサイクル
燃料として利用する。
③プラスチックの燃焼
プラスチックの燃焼の際、一酸化炭素や塩化水素などの有毒ガスが発生する危険性がある。このため、発生するガスの浄化処理が必要となる。塩素原子を含んだプラスチックからは、有毒なダイオキシンが発生しやすい。ゴミ焼却施設付近の土壌汚染が問題になっている。
3)天然ゴムと合成ゴム
ゴムの構造と性質
ゴムの木に傷をつけると白い粘性のある樹液が浸み出してくる。この樹液をラテックスという。ラテックスはコロイド溶液で、酸を加えると凝固する。この凝固したものを、生ゴムまたは天然ゴムという。生ゴムの成分はイソプレンが付加重合した構造のポリイソプレンである。(注意:イソプレン→ポリイソプレンのとき二重結合の位置が変わることに注意)
イソプレンは単結合を二重結合2つではさんだ構造(-C=C-C=C-)をしている。このような二重結合を共役二重結合という。共役二重結合をもつ化合物が付加重合すると生成する高分子には必ず二重結合が入ったものができる。
加硫
生ゴム分子には流動性があるため、ゆっくり力を加えると伸びきってしまい、元に戻らなくなる。また、高温では柔らかくなり、低温では硬くなる。さらに生ゴム分子には二重結合があり、空気中では二重結合が徐々に酸化され、ゴム特有の弾性を失う。これを老化という。このように、生ゴムには耐熱・耐寒性および耐久性が十分ではなく、実用性に乏しい。そこで、生ゴムに硫黄を5~8%加え、約140℃に加熱すると弾性が大きくなり、化学的にも機械的にも強くなる。この操作を加硫といい、鎖状ゴム分子の二重結合のところで硫黄原子が架橋構をつくり、ゴム分子どうしが結合する。日常生活で使われているゴムは加硫を行ったもので、弾性ゴムまたは加硫ゴムという。また硫黄を30~40%で加硫するとエボナイトといわれる硬い物質ができる。
③合成ゴム
イソプレンによく似た構造をもつ化合物を単量体として付加重合させると、天然ゴムによく似た性質の物質が得られる。
・ブタジエンゴム CH2=CH-CH=CH2 の付加重合
・クロロプレンゴム CH2=CCl-CH=CH2 の付加重合
・スチレン-ブタジエンゴムC6H5-CH=CH2とCH2=CH-CH=CH2の間で付加重合(共重合という)
・アクリロニトリル-ブタジエンゴム CH2=CH-CNとCH2=CH-CH=CH2の間で付加重合