物理変化と化学変化
食塩を水に溶解したり、水に熱を加えて水蒸気にしたりする変化は、その物質の状態(固体,液体,気体,水溶液など)が異なるだけで、その物質自体は変化していない。食塩NaClは水に溶かしてもNaClだし、水H2Oは水蒸気にしてもH2Oである。このような変化を物理変化という。一方、ある化学物質が、別の化学物質に変化することを化学変化といい、その過程を化学反応という。
化学反応式
化学変化を表す式を化学反応式という。例えば、水素と酸素が反応すると水になる。これを化学反応式で表すと次のようになる。
2H2 + O2 → 2H2O
化学反応式のなかで、「 → 」の左側(左辺)にある物質は、互いに反応する物質なので反応物、右側(右辺)は反応してできた物質なので、生成物という。また、化学反応が起こると、物質は別のものに変化するが、原子の数は反応前と反応後で変化することはないので、左辺と右辺で原子の数が合うように係数をつける。
化学反応式を書く
例1 「 亜鉛に塩酸を反応させると塩化亜鉛と水素が発生する 」
① 反応物の化学式を左辺、生成物の化学式を右辺に書いて、「 → 」で結ぶ。
(化学式は与えられることもあるが、自分で書けるようにしておく方がよい)
Zn + HCl → ZnCl2 + H2
② 左辺と右辺で原子の数が合うように係数をつける。ただし、「1」は省略する。
(どれを基準にしても構わないが、なるべく複雑な化学式を1とするとよい。ここではZnCl2を1とする)
Zn + HCl → 1ZnCl2 + H2
(ZnCl2を1とすると、右辺はZnが1、Clが2になるので、左辺もZnが1、Clが2になるように係数をつける。)
1Zn + 2HCl → 1ZnCl2 + H2
(この時点で、左辺がH2に決定しているので、右辺もH2になるように係数をつける)
1Zn + 2HCl → 1ZnCl2 + 1H2
(係数1を省略して完成)
Zn + 2HCl → ZnCl2 + H2
例2 「 窒素と水素が反応するとアンモニアが発生する 」
① 反応物と生成物を「 → 」で結ぶ。
N2 + H2 → NH3
② 係数をつける。
(ここではNH3を1にする)
N2 + H2 → 1NH3
(他の物質の係数をつける)
N2 +H2→ 1NH3
(ポイント:分数は使わないこと ・・・ 全体を2倍すれば分数はなくなる。)
1N2 + 3 H2 → 2NH3
(係数1を省略して完成)
N2 + 3 H2 → 2NH3
例3「 メタンを完全燃焼させる 」
① 生成物が書いてないので自分で考える。
(ポイント:燃焼または酸化というときは酸素O2と反応させる)
(ポイント:CとH、または、CとHとOだけでてきているものを酸化すると二酸化炭素CO2と水H2Oができる)
CH4 + O2 → CO2 + H2O
② 係数をつける。
(例1,2と同様につけられる)
CH4 + 2O2 → CO2 + 2H2O
例4「銀イオンを含む水溶液に銅を加えると銀と銅(Ⅱ)イオンが生じる。」
イオンを含む化学反応式をイオン反応式という。つくり方はこれまでと同じ。この場合、右辺と左辺で、原子の数だけでなく、電荷の総和も等しくする。
① 反応物と生成物を「 → 」で結ぶ。
Ag+ + Cu → Ag + Cu2+
② 電荷の総和が等しくなるように係数をつける。
(先に+,-を合わせる。この場合、右辺が2+,左辺は1+なので、1+の方を倍にすると合う)
2Ag+ + Cu → Ag + 1Cu2+
③ 原子の数が合うように係数をつける。
(すでに係数がついているところがあるので、ついていないところで合わせる)
2Ag+ + 1Cu → 2Ag + 1Cu2+
(係数1を省略して完成)
2Ag+ + Cu → 2Ag + Cu2+
問題 次の化学変化を化学反応式で表せ。
(1)エタノール(C2H6O)を完全燃焼させる。
(2)アルミニウムに塩酸を反応させると、塩化アルミニウムと水素が生成する。
問題 次の化学式の係数を入れよ。ただし、1も場合は「1」と記せ。
( )Cu+( )HNO3 →( )Cu(NO3)2+( )NO+( )H2O
これは、目算(これまでの方法)では係数はつけられない。このように複雑な係数の場合は以下に示す「未定係数法」によって求めることができる。
まず、次のように係数を置く。
aCu + bHNO3 → cCu(NO3)2 + dNO + eH2O
右辺と左辺の原子が等しくなるように、次のように方程式をたてる。
Cuに関して a = c ・・・①
H に関して b = 2e ・・・ ②
N に関して b = 2c + d ・・・ ③
O に関して 3b = 6c + d + e ・・・ ④
①~④を連立させる。未知数が5に対して、方程式は4つしかないので、a~eのどれかを1にする。
(なるべく多く使われるものを1にするとよい。この場合は、b = 1 として連立させるとよい)
②、b=1より、e = 1/2
③、b=1より、1 = 2c + d ・・・ ③’
④、b=1、e=1/2より、 5/2 = 6c + d ・・・ ④’
④’‐③’より、 c = 3/8
①、c=3/8より、 a = 3/8
③’、c=3/8より、 d = 1/4
反応式の係数に分数は使えないので、a~eを8倍すると、全部整数になる、つまり、
a=3、 b=8、 c=3、 d=2、 e=4
化学反応式と量的関係
ポイント : 反応式の係数(の比) = 物質量(モル数)(の比)
例) N2 + 3H2 → 2NH3
本来の意味は「N21分子(個)とH23分子(個)が反応してNH32分子(個)が生成する」であり、係数は個数を意味している。また、1molは6.0×1023個という個数の単位なので、係数の比は物質量(モル数)の比となる。
つまり、「N21molとH2 3molが反応してNH3 1molが生成する」と言い換えることができる。