三角不等式の証明を簡単に解説

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|x| – |y| ≦ |x + y| ≦ |x| + |y|.

解析学で出て来る, 有用な不等式。

[証明]

[I] |x| – |y| ≦ |x + y|

0 ≦ |x|

|x| ≧ |y| ≧ 0 の時 |x| – |y| ≧ 0, |x + y| ≧ 0 より

|x + y|2 – (|x| – |y|)2 = x2 + 2xy + y2 – (x2 – 2|xy| + y2)
= x2 + 2xy + y2 – x2 + 2|xy| – y2) = 2(xy + |xy|).

2(xy + |xy|)一般に |a| ≧ -a だから |a| + a ≧ 0. 故に |x + y|2 – (|x| – |y|)2 = 2(xy + |xy|) ≧ 0.

従って |x + y|2 ≧ (|x| – |y|)2 で, 両辺とも正だから最初の不等式が成り立つ。 等号成立は xy + |xy| = 0 即ち |xy| = -xy. 従って xy ≦ 0.

[II] |x + y| ≦ |x| + |y|.

両辺とも正だから, (|x| + |y|)2 – |x + y|2 = (x2 + 2|xy| + y2) – (x2 + 2xy + y2) = 2(|xy| – xy). [I] と同様に |xy| ≧ xy だから, (|x| + |y|)2 – |x + y|2 = 2(|xy| – xy) ≧ 0. から言える。 等号成立は |xy| = xy 即ち xy ≧ 0.


これが 三角不等式 triangular inequality と呼ばれるのは, x, y が三角形の二辺の長さの時に三角形を作る条件と似ているからである。

[II] を先に証明しておいたとすると [I] は |x| = |(x + y) – y| ≦ |x+ y| + |-y| = |x + y| + |y| から |y| を移項するという手もある。 但し等号成立条件が厄介である。

尚, 同じことであるが

||x| – |y|| ≦ |x + y| ≦ |x| + |y|.

を三角不等式と呼ぶこともある。