正しいか正しくないかが数学的にはっきり分かる言明を 「命題 proposition」という。 正しい命題は真 true であると言われ, 正しくない命題は偽 false であると言われる。 例えば 1
∧ 普通 & と書かれるのがこの記号である, A 且つ B のことを A∧B と書く。
∨ これは 「又は」 と読まれる。 A 又は B のことを A∨B と書く。
¬ これは 「でない」 と読まれる。 ¬A とは 「A でない」 ことを意味している。
⇒ これは 「ならば」 と読まれる。 A⇒B は 「A ならば B」 と読まれる。
⇔ これは 「の (必要十分) 条件は」 とか 「と同値な命題は」 と読まれる。 A⇔B とは A と B が同値, 即ち, A と B の数学的内容が一致していることを示す (但し一目見て分かるとは限らない)。
x を実数とするとき x > 1 等は, x の値が定まらないと真であるか偽であるかが定まらない。 しかし, x の値を定める毎に真であるか偽であるかが定まる。 これを述語 predicate と呼ぶが, F(x) 等の形で書かれる。
∀ これは全称記号 Allzeichen という記号で ∀x という形で 「総ての x について」 とか, 「任意の x について」 と読まれる。 ∀x を全称作用素 universal quantifier という。 ∀xF(x) とは, 「総ての x について F(x) が成り立つ」 ということを意味している。
∃ これは存在記号 Existenzzeichen という記号で ∃x という形で 「次の性質を満たす x が存在する」 と読まれる。 ∃x を存在作用素 existential quantifier という。 ∃xF(x) とは 「F(x) を成り立たせるような x が存在する」 ということを意味している。 注意しなくてはいけないのは, この 「存在」 は 「少なくとも一つは存在する」 ということを言っているのであって, 「唯一つ存在する」 ということとは違う。
尚, ∀x と ∃x を合わせて限定作用素 quantifier という。
∃!xF(x) ⇔ ∃xF(x)∧(F(y)⇒(y=x)) と定義する。 即ち F を満たす x が存在し, y も F を満たすならばその y は x に等しいことを要請するので, F を満たす x が唯一つ存在することを表している。
ものの集まりでそれに属すか属さないかがはっきりしているものを集合 set, ensemble, Menge という。
有名な集合として N (自然数の集合), Z (整数の集合), Q (有理数の集合), R (実数の集合), C (複素数の集合) がある。
N は natural number の略。 Z はドイツ語 Zahlen の略である。 整数を ganzen Zahlen というのである (英語では integer だが I は他の記号と紛らわしいのである)。 Q は商 quotient の略である (という説と実数 R の一つ手前の Q を用いたという説があるらしい)。 有理数 rational number では実数と区別がつかないから。 R は実数 real number の略である。 C は複素数 complex number の略。
例えば a が自然数であることを a ∈ N 又は N ∋ a と書く。 ∈ はギリシャ語の be 動詞に当たる単語の三人称単数現在の頭文字 ε からとったということである。 N は Z の一部分であるが, こういうのを表すのに N ⊂ Z と書き, N は Z に含まれる contained と読む。 同じことを Z ⊃ N とも書く。 二つの集合 A, B について A ⊂ B であるか又は A = B であるとき A⊆B と書く (最初の ⊂ がその意味で用いられている教科書もあるので注意)。 同じことを B⊇A とも書く。
集合を A = {x | x が満たすべき条件} という形で書くことが良くある。 x は代表として用いているだけで, | は区切り記号, { } で挟まれた形が 「集合だよ」 と数学の専門家に教えているのである。 例えば {1, 2} と書くだけで, 1 と 2 だけが members である集合を表す。
さて A∪B = {x | x ∈A 又は x ∈B} を A と B の和集合, 又は合併集合 union という (が A 又は B と読む)。
A∩B = {x | x ∈A 且つx ∈B} を A と B の積集合, 共通部分 intersection という (が A 且つ B と読む)。