三角函数(関数)の加法公式とその周辺を簡単に解説してみた

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三角函数の加法公式 (或いは加法定理) と呼ばれるものは次の 6 つである — 勿論正割, 余割, 余接の各函数に関しても, 加法公式は存在するが, 普通使わないので, ここには書かない。

sin(α + β) = sin α cos β + cos α sin β,
sin(α – β) = sin α cos β – cos α sin β;

cos(α + β) = cos α cos β – sin α sin β,
cos(α – β) = cos α cos β + sin α sin β;

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覚え方は + の方だけ覚えておけば, 例えば

sin(α – β) = sin(α + (-β))
= sin α cos(-β) + cos α sin(-β)
= sin α cos β + cos α × (-sin β)

だから – の法の公式を得る。

sin は 「サインコサイン, コサインサイン」 等といって私は覚えたが, 強制するつもりはさらさらない。 どういう覚え方をしてもかまわない。

証明は覚える必要がない。 覚えている人は殆どいないと思われるが, もし気になったらこちらをどうぞ。


さて, sin の加法公式の + の方と – の方を足すと次の公式を得る。

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同様に cos の加法公式の + の方と – の方を足す, 或いは引くと次の公式を得る。

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これら三つの式を 「和を積に変える公式」 という。 これらの公式は覚えるのではなくて, いちいち今やったように作る。 従って作り方を覚える公式である。

これらの公式は, 大航海時代に船の中で三角函数の長い桁数の掛け算をするときに, 非常に重宝したらしいが, 今は数学の中で必要とされるくらいである。


更に 「和を積に変える公式」 に於いて,

A = α + β,
B = α – β

と変換すると α = (A + B)/2, β = (A – B)/2 なので

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これらの公式もいちいち作る。 こちらの公式の有用性は低いように思われる。


加法公式 (+ の方) で, α, β を共に θ とすると,

sin 2θ = sin(θ + θ) = sin θ cos θ + cos θ sin θ
= 2 sin θ cos θ.

又,

cos 2θ = cos(θ + θ) = cos θ cos θ – sin θ sin θ
= cos2 θ – sin2 θ.

更にこの式は sin2 θ + cos2 θ = 1 だから

cos 2θ = cos2 θ – sin2 θ = cos2 θ – (1 – cos2 θ)
= 2cos2 θ – 1

ともなり, 又

cos 2θ = cos2 θ – sin2 θ = (1 – sin2 θ) – sin2 θ
= 1 – 2sin2 θ

ともなる。

又,

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これらを二倍角の公式という。 これらも作り方を覚える公式である。


二倍角の公式から

cos 2θ = 2cos2 θ – 1

なので, これから cos2 θ = (1 + cos 2θ)/2. 通常 α = 2θ と書き換えて

cos2(α/2) = (1 + cos α)/2.

同様に cos 2θ = 1 – 2sin2 θ から

sin2(α/2) = (1 – cos α)/2.

更に

tan2(α/2) = (sin (α/2)/cos (α/2))2 = sin2(α/2)/cos2(α/2)
= 2sin2(α/2)/(2cos2(α/2)) = (1 – cos α)/(1 + cos α).

これらを半角の公式という。 これも作り方を覚える公式である。


再び加法公式 (+) に於いて α = θ, β = 2θ と置くと,

sin 3θ = sin(θ + 2θ) = sin θ cos 2θ + cos θ sin 2θ

ここで二倍角の公式を用いて

sin 3θ = sin θ(1 – 2sin2 θ) + cos θ・2sin θ cos θ
= sin θ – 2sin3 θ + 2sin θ cos2 θ
= sin θ – 2sin3 θ + 2sin θ(1 – sin2 θ)
= sin θ – 2sin3 θ + 2sin θ – 2sin3 θ
= 3sin θ – 4sin3 θ.

同様に

cos 3θ = cos (θ + 2θ)= cos θ cos 2θ – sin θ sin 2θ
= cosθ(2cos2 θ – 1) – sin θ・2sin θ cos θ
= 2cos3 θ – cosθ – 2sin2 θcos θ
= 2cos3 θ – cosθ – 2(1 – cos2 θ)cos θ
= 2cos3 θ – cosθ – 2cos θ + 2cos3 θ
= 4cos3 θ – 3cosθ.

更に

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で, ここで 1/cos2θ = 1 + tan2θ なることを用いると,

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これらを三倍角の公式という。 これらも作り方を覚える公式であるが, 殊に tan の三倍角の公式は殆ど活躍する場がない。


ついでに, 0 と π/2 (90 度) の三角比についても少し言及しておく。

0 については θ を任意の角とするとき, 加法公式から

sin 0 = sin (θ – θ) = sin θ cos θ – cos θ sin θ = 0.

cos 0 = cos (θ – θ) = cos θ cos θ + sin θ sin θ
=  cos2 θ + sin2 θ = 1.

tan 0 = sin 0 / cos 0 = 0/1 = 0.

だから加法公式を覚えていれば, 変なやり方をしなくても計算できる。

π/2 (90 度) に関しては, π/4 (45 度) が分かれば

sin(π/2) = sin 2(π/4) = 2sin(π/4) cos(π/4) = 2(1/√2)(1/√2) = 2/2 = 1.

cos(π/2) = cos 2(π/4) = cos2 (π/4) – sin2 (π/4) = (1/√2)2 – (1/√2)2
= 1/2 – 1/2 = 0.

tan(π/2) は 分母となるべき cos(π/2) = 0 だから, 定義できない。

これが分かると,

sin (π/2 – θ) = cos θ,
cos (π/2 – θ) = sin θ,
tan (π/2 – θ) = cot θ.

sin (π – θ) = sin θ,
cos (π – θ) = -cos θ,
tan (π – θ) = -tan θ.

も全て加法公式から出せる。 面倒なので過程を書かない (笑)。